EXHIBITIONS

新正春「絵画と金」

2023.11.17 - 12.06
 FOAM CONTEMPORARYで新正春の個展「絵画と金」が開催される。

 新正は2021年に京都芸術大学大学院を修了し、卒業後も特定の技法、メディウムにこだわることなく精力的に活動を続けている。近年では、新たな試みとして、現代美術の作品をサンプリングした「Sampling Ecosystem」シリーズを制作している。本展では、過去に裁判にもなった前衛美術家・赤瀬川原平が制作した「零円札」をサンプリングし、金色に塗装した新作を紹介する。

 新作では、光の反射やテクスチャ、ゴールドの塗装などが与える華やかさや「絵画」特有の美しさを表現している。その反面、貨幣が黄金でもあったこと、人々を誘惑し続けていることを強調するような煌びやかな様は、あからさまで露悪的な印象も与える。過去様々な論争を生み出した赤瀬川の作品をサンプリングすることで、過去の赤瀬川と当時の社会の関係性、そして現代の鑑賞者を取り巻く環境と作品の関係性を対比している。

 新正は本展に際し、以下のステートメントを発表している。

「本展示では、美術と経済という切り離すことのできない問題を主題にすべく「絵画と金」と題して「Sampling Ecosystem」シリーズを中⼼とした展示を行う。(......)⾚瀬川は1960年代初頭、旧千円札紙幣を写真製版によって複製し、これを⽤いてさまざまな作品制作を行った。この取り組みは「通貨及証券模造取締法」に触れ、⾚瀬川は起訴されることとなり裁判となった。

 ⼤きな反響を呼んだ本裁判は、結果的に現代美術を取り巻く環境というものを可視化させることになり、美術と社会がそう遠くはないものだと示したと言える。一見、美術と社会は遠い存在のように思えるかもしれないが、実際には複雑に絡み合いながら成立している。美術のなかに散りばめられた社会の痕跡。様々な背景や視点を持つ鑑賞者の存在。多様な世界、見方により構成されるアートワールドの興味深さを本展覧会にて⽣み出すことが出来ればと考えている」。