アントニス・ピッタス「パレステジア」

　無人島プロダクションで、アントニス・ピッタスの個展「パレステジア」が開催されている。

　ピッタスは1973年アテネ生まれ、アムステルダム在住。ピッタスは「歴史のリサイクル（歴史の現代化／現代の歴史化）」をテーマに研究・制作をしているアーティスト。時代の観察者として、現代の社会的・政治的な問題から発生するセーフティとコントロール、経済危機、抵抗、暴力や破壊行為といった側面を作品化している。バウハウス、デ・ステイル、ロシア構成主義を含むモダニズムと歴史的前衛芸術の視覚言語をサンプリングしながら、それらの歴史的な発展経路を独自にマッピングし、それぞれの事象がどのように現在に再登場しているかを検証している。

　本展の展覧会タイトルである「Paraesthesia（パレステジア、感覚異常）」とは、手や腕、足などに感じる痺れやヒリヒリ感、灼熱感などの身体感覚を指す言葉を指す。自らもこの症状に悩まされているピッタスは「パレステジア」という概念を、現在の暴力的、破壊的な政治的現実に対して麻痺していたり無関心だったり、また方向性を見失ったりする集団心理を描写するメタファーとしてとらえている。

　シルクスクリーン作品をフラッシュで撮影すると、反射特性が誘発され、肉眼で見るイメージが反転する。ピッタスは、鑑賞者に作品の撮影を呼びかけることで、作品に能動的な役割を担うように促し、撮影するという行為を通して鑑賞者を目撃者へと変えている。ピッタスは作品のパフォーマティブな側面を通して、見えるものと見えないもの、内部と外部、開かれた公共空間とアートスペースの内部とのあいだの露出と隠蔽についての議論を始めようとしているのだ。

　本展では、今年3月にアムステルダムのAnnet Gelink Galleryで発表したインスタレーションをベースに、5月にリサーチのために来日した際にインスパイアされた要素が反映された新作を紹介する。