EXHIBITIONS

My spirit will follow you

2023.09.29 - 10.22
 EUKARYOTEで、サリーナー・サッタポンと磯村暖による展覧会「My spirit will follow you」が開催される。

 サリーナーはタイ出身のビジュアルアーティストであり、タイ国立シラパコーン大学絵画・彫刻・グラフィックアート学部にて修士課程を修了。現在は東京藝術大学グローバルアートプラクティス(GAP)の博士課程に在籍している。これまで日常生活や自身の経験をインスピレーションとして、パフォーマンスアート、写真、ビデオアート、インスタレーションなど、様々な媒体を通じて作品を創作し続けている。

 磯村もまた、東京藝術大学在学時より国内外各地へ赴き、その土地の歴史や文化のあり方に関する比較とリサーチを行い、クィアカルチャーや地域の宗教、プリミティブな表現のみならず、近年は地球史における生物多様性など参照先を広げながら、絵画や彫刻、ビデオインスタレーション、パフォーマンスといった様々な表現活動を行っている。

 展覧会のタイトル「My Spirit Will Follow You」は、サリーナーと磯村、それぞれが離れた場所から行ったオンラインでの会話から生まれた。ふたりのあいだについて、サリーナーは以下のように話している。

「出会って以来、私たちは良い友達ですが、別の場所にいることもよくある。たとえ遠く離れていても、私たちはまだつながりを持っている。物理的には遠いけど、精神的には遠くない」。

 本展のキーワードは「孤独」という言葉が意味する言語間におけるニュアンスの違いだ。日本語の「孤独」とは、一般的に否定的で悲観的な意味を持つが、人が単独でいることについて積極的に捉える「Solitude」など、微かな相違を持つ言葉が世界には存在する。元々ふたりの制作手法における共通点であった「決めたルールのなかで遊び、展開していく」という即興的かつ論理的なメソッドによって、概念的な差異は躍動的に変化を始めた。言語からドローイングへ、また写真へ、彫刻、ピアノの音、さらに英語から俳句、料理、タイのクローンと呼ばれる詩へ……など、二人のあいだであらゆる様に変えてやりとりを重ね、変容してゆくニュアンスや概念の痕跡と数々のかたちを、本展では2018年から継続するサリーナー個人によるプロジェクト、「Balen(ciaga) I belong」の新作と交え、映像とインスタレーションとして発表する。

 それらに加え、アーティスト各個別のプロジェクトも公開。今年はじめにサリーナーが台湾で行った現地の独居者と彼らの物・場所・人とのつながりに関するインタビューを元にした新作の映像と、映像にリンクしたペインティングからなる作品群などを紹介する。サリーナーが他者の視点を通して生活を抽出し、普遍的なものへと作品化していく。

 いっぽうで、磯村はこれまで作品のかたちで言及することのなかった「孤独」のニュアンスを手がかりに、磯村自身の視点から導き出した自画像とも言える作品を立体化した。本展ではベッドの上に横たわり、周囲にあるデジタル機器や、ホコリ、植物など、人間とは異なる生命の時間軸に共感し、無機物と有機物の垣根を超えて人間や社会と断絶しながら、それ以外のものと溶け合いつながってゆく在り方を提示する。

 また、会期中はにサリーナーと磯村よるパフォーマンスも行われる。昨年サリーナーがスウェーデンで滞在制作と発表を行った作品の映像記録をもとに、木製の構造物と大量の古着のTシャツから成る舞台のなかで、匿名的な生活が織り交ぜられたその痕跡をサリーナーと磯村によって多層的に展開していく。