EXHIBITIONS

求道の画家

岸田劉生と椿貞雄

2017.10.07 - 12.17

椿貞雄 童女像(毛糸の肩掛けをした菊子) 部分 1921 米沢市上杉博物館蔵

岸田劉生 麗子 毛糸肩掛けして人形を持つ肖像 1919

椿貞雄 赤土の山 1915 米沢市上杉博物館蔵

岸田劉生 夏の路(鵠沼海岸) 1922 笠間日動美術館蔵

 大正期、北方ルネサンスの巨匠たちを規範とし、精密な写実描写により事物の奥に内在する美を描き画檀の一大勢力をなした異才・岸田劉生(1891-1929)。そして彼に私淑して画法を学び、岸田の死後は彼の日本画表現を受け継いでおだやかな独自の境地へと到達した椿貞雄(1896-1957)。この師弟の絆と写実の美に光を当てる展覧会が開催される。

 1914年、画家を志して米沢から上京した椿は、劉生の個展を見て圧倒され、手紙を通して交流を始めた。劉生の勧めで巽画会に出品した椿は最高賞を得、鮮烈な画壇デビューを果たす。その後、二人は写実を通して「内なる美」と「日本人の油絵」を追求すべく草土社の創立に参加し、当時の画壇に新風を吹き込んだ。

 劉生の死後、椿は制作に行き詰るほどの状況にも陥ったが、師劉生も熱望していたヨーロッパ遊学を果たし、かえって日本を意識する経験などを経て制作活動で自己の独自性を発揮してゆく。劉生の構想した日本における油彩画表現を継承し、近代日本の市民生活に根ざした穏やかなまなざしを特徴とする画境に達した。

 本展では、劉生と椿の作品や書簡などの資料類を展示。「内なる美」を生み出した劉生と、「愛情の画家」となった椿の軌跡を辿ることができる。