EXHIBITIONS

関根伸夫展―旅する人

2023.01.20 - 02.04

関根伸夫 無題(レゾネ No.19) 1966

関根伸夫 位相-大地(1968年) 1986

関根伸夫 空相―円(レゾネ No.147) 1977

 ときの忘れものは、「関根伸夫展―旅する人」を開催。「もの派」を代表する作家・関根伸夫(1942〜2019)の初期作品を紹介する。

 多摩美術大学絵画科で学び、斉藤義重に師事した関根伸夫。関根が3・4年の時の作品「鉱物シリーズ」は、それまでに描かれた「エロスシリーズ」と「仏像シリーズ」が混然一体となって、黒い湖水ともいうべき暗黒と、そこに落ち込んでいく形体たちの悲しげな表情が中心で、関根がもっとも内的部分に沈殿した時期に制作された。

 66年に師・斎藤義重に出会い、抽象画の基礎知識を学ぶうちに自身の作品の理論性の弱さに気づいた関根は、模索の末、現代の最先の空間認識・空間解釈を研究し、「位相」という空間認識法に結びついた。そして68年、初めての野外彫刻展に参加し、須磨離宮公園(神戸市)の大地に大きな穴(円筒)をスコップでひたすら掘り、掘り出した土をその穴の脇に円筒形に積み上げた《位相ー大地》を発表。延々とその作業を続けたとしたら地球の中身は空っぽになり、隣にまったく同じ地球が生まれるという位相幾何学を援用した思考実験ともいうべき壮大なスケールの作品で、関根は一躍注目の的となった。

 70年にはヴェネチア・ビエンナーレの日本代表に選ばれ、これを機に渡欧。ステンレス柱の上に自然石を置いた《空相》を出品し、のちにデンマーク・ルイジアナ美術館の永久所蔵作品(セキネ・コーナー)となる。関根は、建築と芸術が融合したイタリアの都市・建築空間に感銘を受け、日本ではまだなじみの薄かった「環境美術」をテーマとした活動をするため、73年に「株式会社環境美術研究所」を設立するに至った。

 本展は「関根伸夫展」の第1弾として、《位相―大地》以前の学生時代に描かれた油彩など、初期作品を中心に展示。彫刻や版画、ポスターなども紹介し、関根の表現の変遷をたどる。