EXHIBITIONS

Shizubi Project 8

世界は生きている 松藤孝一

松藤孝一 世界の終わりの始まり 2021 アートハウス おやべ(富山)での展示風景

松藤孝一 見えないものが見えたとき 2017

松藤孝一 手前から
風が波を奏でる 2022
空を旅する 2022
ギャラリーO2(金沢)での展示風景

 静岡市美術館の展示シリーズ「Shizubi Project」では、多くの人が行きかうエントランスホールの開放的な空間で、現代の様々な美術の姿を紹介してきた。第8回となる今回は、ガラスを素材に人間と自然環境の関係性を見つめてきたアーティスト、松藤孝一の作品を展示する。

 松藤は1973年生まれ。溶解炉のなかで変幻自在に形を変えるガラスに魅せられた松藤は、2011年の東日本大震災で発生した原発事故をきっかけにウランガラスを扱うようになった(*)。松藤の作品の、大小様々なかたちの集合体はビルが整然と立ち並ぶ都市を思わせ、穏やかな佇まいだが、そこにUVライトを当てると一転、怪しく蛍光色に発光する。相反するその表情や、行き過ぎた力が加わると割れてしまうガラスの脆さはそのまま、人間の関わり方次第で恩恵にも脅威にもなりうるウランそのものの危うさへとつながる。

 本展では、松藤の代表作であるウランガラスによるインスタレーション《世界の終わりの始まり》や、希ガスを閉じ込めたガラス作品、さらに気泡ガラスをレンズに使った写真や静岡の波の音とガラスを組み合わせた新作も発表。人間よりも遥かに長い歴史を持つ元素や自然と関り合いながら世界の深遠さに迫り、自らの立脚地を探し求める作家の試みを紹介する。

*──作家が制作するガラス作品のウラン含有率は0.1%程度で、人体でカリウムが放出すると言われている放射線量とほぼ同程度。