EXHIBITIONS

大江慶之「くちびるがお好みの味すんねん」

2022.11.25 - 12.24

展示風景より Photo by Hyogo Mugyuda

展示風景より Photo by Hyogo Mugyuda

展示風景より Photo by Hyogo Mugyuda

展示風景より Photo by Hyogo Mugyuda

 TEZUKAYAMA GALLERYは、大江慶之の個展「くちびるがお好みの味すんねん」を開催する。

 大江は1980年に大阪府に生まれ、現在も大阪を拠点とするアーティストだ。作家としてデビューをした当初から自画像を中心とした絵画作品を発表してきたが、2007年以降、並行して立体作品も制作。これまでに台湾、ニューヨーク、ロンドン、バーゼルなど国外でも発表を重ね、精力的に活動している。

 視点を変えることで、そのものが持つ意味や認識が変化するということに関心を抱き、作品制作を行う大江は、異質なモチーフを組み合わせることで固有の文脈から切り離した状態にし、新たなイメージへと転換させる。大江の立体作品には骸骨、鶏頭、昆虫、爬虫類など様々なモチーフがメタファーとして組み込まれており、コラージュ的に構成されたモチーフ同士の関係性に注意深く思考をめぐらせることで、多様な解釈やストーリーへとつながりを見せる。

 本展ではすべて新作のペインティング作品30点以上を展示。2007年以降は主に立体作品を中心に発表を重ねてきた大江の、絵画作品に焦点を当てた初の個展となる。

 昨年より大江が手がけている絵画作品には、壁にマスキングテープで貼り付けたドローイングや立体作品のマケットを思わせる構造物などがモチーフとして登場する。しかし、それは作家の内省的な部分を語るために取捨選択されたモチーフというよりは、それらから一定の距離を保ちながら、冷静にその状況を眺めている大江自身の視点であることを説明するとともに、大江の絵画作品に対する独自の思考を画面から読み取ることができる。

 作家が目にした対象をキャンバスにアクリルという単一の素材(あるいは、絵画を構成する最小限の素材)に置き換えるという行為は、大江にとってたんなる物質の転換を指すのではなく、ドローイングや立体のマケットといった作家にとって私的なものたちを絵画の枠組みのなかで構成し直されることで、統制されたキャンバスのなかでのみ成立する視覚言語を付与し、異なる視点や解釈を生み出そうとしていると考えられる。