EXHIBITIONS

松本奈央子 “Memoria! Fantasia.”

2022.10.08 - 11.10

松本奈央子 Violet 2022

 KOKI ARTSでは、松本奈央子の個展「Memoria! Fantasia.」を開催。花弁を扱った作品「Violet」の連作を中心に展開する。

 松本は1987年生まれ。2012年多摩美術大学卒業。福沢一郎賞(2012)、トーキョーワンダーウォール賞(2011)を受賞。17〜18年まで文化庁新進芸術家海外研修員としてドイツのミュンスター芸術アカデミーでクラウス・メルケル教授に師事。現在、埼玉を拠点に制作を行う。

 本展で発表される「Violet」シリーズは、新たな絵を描くために旧作のキャンバスを塗りつぶす過程から始まった。その1作目では、目の粗い麻布に、余白を残しながら下地の白色が塗られ、その境界にスミレの花弁が描かれている。

 松本は、描くときに参照した記憶のなかのスミレについて、「幼少期にどこかの庭で見た小さい紫色」あるいは「思い描きやすい花の形の逆さま、上部2枚下部3枚の花冠」と説明している。これは個人の思い出や植物分類学に対する関心というより、色やかたちにまつわる経験とその記述に対する関心であると話す。

 近年の制作で松本は、何かを描こうとせず絵を描き進めるなかでモチーフを見つけることを試みている。モチーフは筆致の動きや色面の位置であったり、言葉で指し示すことができる具体的なものであったりする。「Violet」に見られる麻布・白色・花弁の図という組み合わせは、画面上でかたちが生まれ位置していくことへの松本の関心と、相互に先導し合う関係にあり、連作のなかで続けられている。