メアリー・コース「Painting with Light（光で描く絵画）」

　SCAI PIRAMIDEでは、知覚と光を主題に制作するアーティスト、メアリー・コースの日本初個展「Painting with Light（光で描く絵画）」を開催。SCAI THE BATHHOUSEとの初めてのコラボレーション展示となる。

　メアリー・コースは1945年生まれ。カリフォルニア州トパンガを拠点に制作・活動。光り輝く白いモノクローム絵画で知られるペインターであり、幾何学的な抽象表現やミニマリズの厳格な形式を背景として60年代に西海岸で派生した「ライト・アンド・スペース」ムーブメントのなかのアーティストのひとりだ。幾何学的な構図に基づき、参照性を持たないその絵画は、量子物理学から現象学に至る幅広い分野を読み込み、光と物質の特性を探究することにより鑑賞者の知覚を呼び起こす。

「Painting with Light（光で描く絵画）」と題された本展では、コースの最新作が一堂に会する。

　永遠性と親密さを同時に感じさせるコースの絵画には、光の反射と屈折の相互作用によって現れては消える幅の異なる光の帯が現れ、白いモノクロームのグラデーションと黒色で区切られたその垂直の帯が、絵画空間における段階的な差異と「現実感」の高まりを強調している。

　鑑賞者が絵画に沿って歩くと、キャンバスは光の屈折による複雑な表情を見せ、視点の位置によって変わる知覚の主観的な性質を明らかにする。そして、細やかな姿勢の変化が絵画との絶え間ない対話をはぐくみ、鑑賞者の身体とキャンバス、その双方を包む空間に新たな関係性を吹き込んでいく。