岡本羽衣「Daily Works - 突き落とされる日々」

　CLEAR GALLERY TOKYOのビューイングルームにて、岡本羽衣による「Daily Works - 突き落とされる日々」展が開催される。

　岡本は1990年生まれ。絵画、パフォーマンスを中心に制作を行う。日常に潜む人間の感情や心理行動を観察し、収集することで、普段私たちが見落とし、蓋をするような出来事に付随する不快な質を描き出す。

　パフォーマンスでは、とくに社会的な規律性から外されたアブノーマルとされる人物の心理を探るため、岡本自身の身体を媒介とした「模倣」を繰り返し行う。ここでは暗黙的に理解できない他者を排斥しようとする社会への疑念や抵抗があり、誰もが抱える精神の揺らぎや苦悩に対して表現者の立場から向き合おうとしている。

　いっぽう、「クオリタティヴ・エヴィデンス（質的証拠）」という岡本がつくり出した概念から描かれる絵画作品では、絵が持つ多様な質によって鑑賞者自身に内在する個人的な経験や記憶を触発することで、心理的な質の想起を試みている。またこのような個人の奥底にある感情や経験自体を、岡本は「証拠」と呼ぶ。岡本は、社会に生まれる多様な存在の質を同等に問い、人間の深淵に踏み込むことで、一括りでは語れない「人間らしさ」を肯定し、表現のなかで掴もうとしている。