EXHIBITIONS

中里斉展

2022.09.17 - 10.16

中里斉 El Caso en Nueva Segovia 1987 © Hitoshi Nakazato Courtesy of MEM

中里斉 One Two Three 1987 © Hitoshi Nakazato Courtesy of MEM

中里斉 BRST 1994 © Hitoshi Nakazato Courtesy of MEM

中里斉 LOS, Orange 1994 © Hitoshi Nakazato Courtesy of MEM

 MEMは、アメリカで活動した日本出身の画家・中里斉(なかざと・ひとし、1936〜2010)による個展を開催する。

 1936年町田市に生まれた中里は、1962年の渡米以後、母校の多摩美術大学で教鞭を執った数年を除いて、生涯をアメリカで過ごした。当時、中里が降り立ったアメリカは、抽象表現主義がその影響を失い始め、反動として大衆文化のイメージを美術に取り込むネオダダやポップ・アートが現れた時期でもあった。また全米の大学キャンパスでは、ベトナム反戦運動が展開されていた。

 ウィスコンシン大学大学院、ペンシルベニア大学美術大学院に学んだのち帰国した中里。日本に戻る前にヨーロッパを旅し、パリの五月革命にも遭遇した。いっぽう日本では学生運動が各校で行われており、多摩美術大学で専任講師を務めていた中里は、結果としてアメリカ、パリ、そして日本における時代の波を体感することとなった。そのなかで中里は、現代社会に生きる芸術家の矛盾に突き当たり、一時は絵筆を手放そうと思い詰めたが、画家としてあくまでも絵画の領域で絵画を超える仕事を追求する道を選んだ。

 中里がアメリカで出合ったのは、最先端の版画技法だった。当時発明されたばかりの一版多色刷りを会得したことが、抽象絵画への展開につながった。中里にとって版画は抽象的な形象を展開するための重要な媒体になった。

 本展は、70年代のミニマルのスタイルから80年代の色面構成の作品へ移行する変革期を中心に、中里の版画における試行とキャンバス作品との関係を考察する。

 なお本展と同時期に、大阪のARTCOURT Galleryでは、「中里斉:1968-1971 東京」(9月24日〜10月22日)が開催される予定だ。