EXHIBITIONS

高嶋晋一+中川周|経験不問

2022.09.03 - 10.02

高嶋晋一+中川周 No Experience Necessary #1 2022

 映像ユニット・高嶋晋一+中川周の個展「経験不問」が、Sprout Curationで開催されている。

 高嶋晋一+中川周は2015年より、カメラの運動性を基軸とした映像作品を発表。それ自体は画面内に姿を現わさないカメラというもののありようの不可解さを問い、またその可動性を活用した、人間不在の映像作品を制作している。主な個展に「視点と支点――最短距離のロードムービー Perspective and Pivot Point: The Shortcut Road Movie」(MEDIA SHOP | gallery、京都、2019)、グループ展に「それぞれの山水」(駒込倉庫、東京、2020)、「IMG/3組のアーティストによる映像作品展」(Sprout Curation、東京、2019)などがある。

 今年から2人は、映像が前提とする諸条件を問い直すためのより包括的なプロジェクトとして、研究会の実施を含めた活動を展開。プロジェクトは「経験不問」と「映像なしの映像経験」と名づけられた二軸から構成されている。Sprout Curationでの2人の初個展であり、プロジェクトの経過報告となる本展では、前者「経験不問」を冠した新作を発表する。

 出品される新作映像3点は、旧作にあった諸々の要素を切り詰め、扱う被写体や場所、そして撮影方法を最小限に縮減するという、映像へのミニマルなアプローチを採っている。何がしかの対象の動きを追ってカメラが動くのではなく、カメラが動くことによってそれに巻き込まれることで対象が動く、というカメラそのものの自己原因的な側面と、「映像が動いて見える/止まって見える(動画/静止画)」の関係を、より尖鋭的に抽出したものとなっているという。

 求人広告に使われる「経験不問」という用語は「特殊な技能はいらない、習わずともすぐに誰にでもできる」という意味で「経験を問わない」ことだが、そのクリシェに対し2人は、「特殊な制約とそこからの試行の蓄積を経なければ、誰であれ至ることが困難である」という意味で「経験を問えない」と、相反するニュアンスも込めている。