西雄大「Cope of night」

　ペインター・西雄大の個展「Cope of night」がVOILLDで開催されている。日本では約3年ぶりの新作展。

　西は愛知県出身、現在は東京を拠点に活動。西の作品は、削ぎ落とされた力強い線、選び抜かれた配色、既視感のあるモチーフが変容し独自のフォルムになったものによって構成されている。それらは作家自身のルーツともなる80年代のアメリカンコミックやヒーロー、ストリートアートなどの影響を受けながら、イラストレーションやデザイン、建築といった、西の多彩な経験から生み出されている。

　一見するとコミカルでシンプルに見える作品群は、緻密な構図と筆使いで描かれており、現代においての物質に対する価値観や、複雑に入り組んだコミュニケーションのかたち、多様化する個性のあり方への皮肉などが巧妙に隠されている。ポップなモチーフを通して様々な問題をユニークに単純化し、直感的にその訴えを感じ取ることができるほど簡潔に構築された作品は、見る者を試しているともいえる。

　本展では、いままでとは違ったアプローチで黒く塗られた背景が印象的な作品を多く展開。新作に描かれる夜のような空間には別の世界が広がっているようにも感じさせ、平面でありながら立体的にとらえることもできる。

　また平面作品に加え、ギャラリーの壁面をキャンバスにした巨大な壁画にも挑戦する。