EXHIBITIONS

転覆する体:アート、ジェンダーとメディア

2022.08.06 - 08.27

キービジュアル

 The 5th Floorで「転覆する体:アート、ジェンダーとメディア」展が開催される。出展作家は、アウカナウ、クラウディア・デル・フィエロ、ヴァ=ベネ・フィアッツィ、クラウディア・リー、前谷開、鷹野隆大、岡部桃の7組。

 本展は、人のもっとも身近にあると同時に現実を映し出す「体」を起点に、性の多様性をはじめ、アイデンティティの重層性について考察するグループ展。「身体的なものとは何か」「体の境界線はどのように定義されるのか」といった素朴な疑問から、「さまざまな社会状況や歴史的文脈に置かれる体を通じて何を伝えることができるのか」といった壮大な問いに迫るという。

 また本展では、「体」に始まる問いに対し、写真や映像、インスタレーションなど多様なメディアで応答する作家とその作品を紹介することで、作家独自のメッセージと表現が、「体」をめぐる価値観や視点について話し合う景気となり得る場づくりを目指すとしている。

 参加作家のアウカナウは、チリ出身のパフォーマンス・アーティスト、劇作家、研究者。2019年よりチリのコンセプシオンにおけるアーティスト・イン・レジデンスで《TRANSMUTACIONES LAFKENCHE[ラフケンチェの変身]》を進行中。このプロジェクトは、ノンバイナリーであり、海と深い関わりのあるラフケンチェ民族である作家自らのアイデンティティを交差させる試みで、特徴的な衣装をまとい、日常の風景に介入するというパフォーマンスを続けている。

 同じくチリ出身のクラウディア・デル・フィエロは、映像、パフォーマンス、インスタレーションを用いた幅広い表現活動を行ってきた。主に南アメリカとヨーロッパにおいて個展やグループ展、メルコスール・ビエンナーレやハバナ・ビエンナーレなどの芸術祭へ出展。ほかにも、チリ国立芸術文化協議会(CNCA)やスウェーデンの芸術補助金委員会より助成を受けている。

 ヴァ=ベネ・フィアッツィはガーナ出身。体を中心に据えたパフォーマンスやインスタレーションを通じて、ジェンダーの差別、クィア性、アイデンティティの政治性や問題、性をめぐる経験、周縁化されたコミュニティについて言及する。「アーティビスト(アクティビスト×アーティスト)」と自称し、キュレーションやAIRの活動にも携わっている。

 クラウディア・リーはチリ出身のアーティスト。視覚芸術の教師を務めた経験を持ち、チリの芸術文化省で労働環境の安全と改善に取り組んできた。ピノチェト独裁政権下で家族が国外追放を迫られ、1980から81年のあいだはどこの国にも所属しない状況が続き、88年になって帰国。2017年に交通事故に遭い、言語障害を負う。現在は事故の前後に制作した作品に基づき、新たな表現を模索している。

 前谷開は、自身の行為を変換し、確認するための方法として主に写真を使った作品を制作。都市や自然、他者との関係において、その都度立ち上がる状況に対する自身の立ち位置を確かめながら、写真や映像、身体を介してそれらを記録し、作品として提示する。個人的でありながら開かれているような、新たな経験の共有を試みている。

 鷹野隆大は福井県生まれ、東京在住の写真家。第31回木村伊兵衛写真賞受賞作家。これまで、自身や作家の知人を撮影した「おれと」シリーズ、都市風景を映し出した写真作品などを手がけている。

 岡部桃は、作品を通じてジェンダーやアイデンティティの問題を取り上げてきた。その写真作品は、厳しく、時には暴力的でさえある現実を、ネオンのように強烈かつ繊細な色彩によって描き出している。

 なお本展は、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京「芸術文化魅力創出助成」、東京藝術大学大学院国際藝術創造研究科の助成を受けて開催される。