EXHIBITIONS

岡野智史「CONY」

2022.07.08 - 08.06

岡野智史 PC 2022

 CLEAR GALLERY TOKYOでは、東京を拠点に活動するアーティスト・岡野智史の個展「CONY(コニー)」が開催。アクリル画の作品を中心に新作の平面作品を発表する。

 岡野は1979年生まれ、埼玉県出身。2004年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。対象についての考察と技法の実験を制作のテーマに、油彩画、鉛筆画のほか、エアブラシを用いて描いた作品を制作している。

 岡野が独自に開発した技法をもとにエアブラシで描くアクリル画の作品は、注意深く吹きつけられた絵具が画布の上でピクセル状に分割され、線はにじみ曖昧で、ピントの合わない図像は低解像度の映像のようでもあり、画面自体が発光しているように見える。アクリル画の作品のモチーフは昔のテレビアニメの一場面や古雑誌から抽出されており、作家の個人的な思いや意図と一定の距離を保つことで、対象物をどのように描くかという試験的な探求に注力している。

 いっぽう油彩画と鉛筆画については、描いては消してを繰り返し、画面に浮かびあがる図像を探る(修行のような)ことだと岡野は言う。

 岡野のエアブラシで描かれた絵画が、かたち(線)から始まりながらも、表面から絵具を画布に染み込ませることで境界をぼかし、光を表現しようとしているの対して、油彩画と鉛筆画は、岡野のかたちのないイメージを現像をするように、幾重に重ねられる筆で、画面の内側からかたちを浮かび上がらせることで、対象物に光を当て、その存在を露わにしていく。

「絵画が鑑賞者に対して与える現象としての光には、イメージのレベルで再現されたそれと絵画という事物それ⾃体に実現されたそれ、つまり画中光と画⾯光の⼤きく⼆種の様相があると⾔えるが、岡野智史の作品がもつ光はその両者のあいだでたえず振幅している。

例えば作家が数年来取り組んでいる、1980-90年代のアニメやゲームの⼀場⾯ないし商品広告をもとにしたどこか奇妙なイメージを描いたアクリル画の場合、まず画⾯全体が(低画質ブラウン管の)ディスプレイのように仄かに滲んだ光を放っているように⾒える。だが、それが単なるディスプレイのイリュージョンに終わっていないのは、じっと眺めているうちに画中の⼈物や光らないはずの道具類が発光体と化しているような観を呈してくるからだ。

同⼀⾊の⾯ごとに型紙をつくってキャンバスに当て、その上からエアブラシで絵具を吹き掛けて描かれた岡野のアクリル画では、イメージが物質的な最⼩単位に分解されるのではなく、⽀持体の物質性の⽅が光の滲みのなかで揮発し、同時にイメージは場から浮いたヴァーチャルな実在感をまとうのである(美術史研究・吉村真、「岡野智史『CONY』に寄せて」より一部抜粋)」。