EXHIBITIONS

写真史家・金子隆一の軌跡

2022.06.28 - 07.31

1970年代半ば〜1980年代前半頃の金子隆一、撮影=島尾伸三

金子隆一《Library》制作年不詳、ゼラチン・シルバー・プリント、145×225mm
自身の書庫を撮影した写真作品

撮影=鷲尾和彦

 MEMとNADiff a/p/a/r/t(1階 書店)の2会場で、「写真史家・金子隆一の軌跡」展が開催される。本展覧会は、2021年6月に逝去した写真史家・金子隆一の業績を偲び、一周忌に合わせその第一次資料を展示するもの。

 1948年に東京で生まれた金子は、父の影響で早くから写真に興味をおぼえ、大学時代に全日本学生写真連盟に加盟、社会的テーマでの集団撮影に参加した。70年代は自主写真ギャラリー運動に身を投じて、写真史家として活動に関わり、80年代には小学館の『日本写真全集』全12巻の調査員として、近代写真の発掘と調査を全国にわたって行った。その後、東京都写真美術館開館準備に携わり、同美術館開館後は、専門調査員を長年務め多くの展覧会の企画を手がけた。

 金子は日本の写真集と写真雑誌の蒐集家としても国際的に知られ、戦前戦後の日本の写真集や写真雑誌を調査することで、日本写真史を詳しく検証した。関わった出版企画として、『日本写真史の至宝』(国書刊行会)、『復刻版NIPPON』(国書刊行会)など多数。著作として『日本は写真集の国である』(梓出版社)などがある。

 MEMの会場では、日本写真史を掘り下げ、再構築・普及し、写真家を育成した金子の半生を年代ごとに紹介。2万点にものぼる写真集、写真雑誌の収集家としても著名であった金子の書庫を、写真家・潮田登久子が撮影したプリントとともに展示する。

 さらに日本写真史の重要な未公開資料を多数展示。学生時代に関わった全日本学生写真連盟の活動、1970年代の自主ギャラリー運動、開館準備から長年勤めた東京都写真美術館での企画など、記録写真、自身の手による写真、著作や関わった印刷物やパンフレット、そしてカタログや書簡といった初公開を多数含む資料展示により、日本写真史の研究における金子の足取りをたどる。

 いっぽう美術、写真書籍を専門に扱うNADiff a/p/a/r/tでは、金子執筆の論文やエッセイが収録された貴重な書籍をはじめ、写真集蒐集家としても著名であった金子推薦の関連書籍を中心に揃え、改めて日本近現代写真史を知るための本や重要な写真集を紹介する。

 なお展覧会と同名のカタログも会期にあわせて出版される予定だ。本展協力は金子節子、主催は金子隆一追悼展実行委員会。