EXHIBITIONS

西澤知美「ambiguous contours」

西澤知美 fibrin 2021 撮影=ヤスモトリョウ

西澤知美 percutaneous absorption 2021 撮影=ヤスモトリョウ

西澤知美 Lip Gloss 2020

西澤知美 Vascular Stent Necklace 2020

西澤知美 Eyelash Curler 2015

 美容と医療をテーマに、自分自身とは何かを問うアーティスト・西澤知美の個展「ambiguous contours」が、OIL by 美術手帖ギャラリーで開催される。

 ⻄澤は東京都出身。東京藝術⼤学⼤学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。美容と医療を主題に、進化した現代の技術、それが施される⾝体とそのフィクション性を表現している。注射器とリップグロスの先端を組み合わせた立体作品、医療用ステントによって支えられた心臓の形に見立てたガラスのネックレス、ビューラーと医療用鉗子をモチーフとした大型彫刻。西澤は、シンボリックなモチーフを取り合わせ、巧妙な技術を用い、広告やジュエリーのように洗練されたデザインの作品を生み出している。

 また、写真、立体など個々の作品が独立した存在感を持ちながらも、展示空間全体が共鳴しあうように成立しているのも、西澤の展示の特徴のひとつ。全体と細部が計算され尽くした空間で、鑑賞者は一瞬にして西澤のつくり出したフィクションの世界に没入することとなる。

 西澤が提示する作品群は、たんに美容行為へのネガティブな批判ではなく、人体の「表面性」への問いかけを核としている。美しさを追求するなかでファンデーションやまつげエクステなど生身の身体を模したメイクを施し、皮膚内部にヒアルロン酸や脂肪などを注入・除去し肌表層を再構築することも「自分自身」なのかという、自分という存在の定義について問いを投げかけている。

 本展は、西澤にとって約2年ぶりとなる新作個展。美容内服薬をモチーフに鏡を用いた作品や、マイクロカニューレ(血管や神経などの皮下組織を傷つけないようにした先の丸い針)の彫刻作品などの新作を発表する。西澤がつくる世界に没入し、自分自身のあいまいな輪郭(ambiguous contours)と境界について考えるきっかけとしたい。

 なお本展出品作は、会場およびアートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術⼿帖」にて販売される。