EXHIBITIONS

小林孝亘「雲と影」

2022.05.24 - 07.02

小林孝亘 Cloud and shadow—Block(red) 2022

小林孝亘 Cloud and shadow—Vessel 2022

 小林孝亘の新作展「雲と影」が開催されている。西村画廊では、4年ぶりの個展。

 小林は1960年に東京都日本橋に生まれ、1986年に愛知県立芸術大学美術学部油画科を卒業。90年代半ばから注目され、これまで西村画廊(1996~)、国立国際美術館(2000)、目黒区美術館(2004)、横須賀美術館(2014)での個展をはじめ、国内外の数多くの展覧会に出展してきた。今年2022年は、豊田市美術館で個展「真昼」が開催され、同時開催のグループ展「サンセット/サンライズ」にも参加し、好評を博した。

 小林は大学を卒業後、9年近く描き続けた「潜水艦」の時代を経て、主に器や枕など日常的なものを題材に、普遍性と光に重点を置いた絵画を制作してきた。つねに時流から一定の距離を保ち、地道に自身の内側を手探りしながら新たな表現を獲得してきた小林の作品は、何かが「存在」していることの不思議さを再認識させる特有の魅力を湛えている。

 小林の作品は、その時々の自身の内面の反映であると同時に、私たちがある「もの」に対して抱いている普遍的なイメージも帯びている。それらの絵画は、極めてシンプルでありながら­­­­、あるいはだからこそ、宇宙のような無限の広がりを感じさせる。

 本展では、海辺の森や砂浜を舞台にした新作のペインティング5点とドローイング4点を発表。小林は今回の展覧会名「雲と影」について、「雲は、視線を上へ上へと誘導するもので、上とはここではない別の世界というイメージ」であり、「影は、ものの存在を示すもので、光と対をなす重要なイメージ」であると語っている。

 小林の言葉が示すように、真昼の無人の砂浜に巨大な壺や不自然なバランスの積木が配置された光景が描かれた本展の新作絵画は、「見える/見えない」の同居を感覚させる非現実感を有し、これまで小林作品が象徴的に表してきた「生/死」「眠り/目覚め」そして「私たちを夢見る夢」などに通じる、奥行きに満ちた世界を内包している。