EXHIBITIONS

江口綾音「分解するQ」

江口綾音 九相図1 2022 © EGUCHI Ayane Courtesy Mizuma Art Gallery

 ミヅマアートギャラリーは、江口綾音の個展「分解するQ」を開催する。

 江口は1985年北海道生まれ。2011年に金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科修士課程油画コースを修了。この世界に存在する愛らしさと不気味さ、生と死という言語的に相反するそれらの調和をテーマに制作を続けている。

 彩度の高い色彩で描かれる江口の絵画には、クマの「ぬいぐるみ」のような可愛らしい生き物、カラフルなキノコなど空想世界のような不思議な風景が描かれている。しかしその細部には、生き物たちの血肉が表現されており、描かれた世界は私たちの生きる矛盾にあふれた世界と同じであると気づかされる。

 ミヅマアートギャラリーでの初個展となる今回は、新作の「九相図」を中心に構成される。

 九相図とは、屋外に置かれた死体が朽ちていく過程を、9つに分けて描く仏教絵画のこと。女人禁制の仏僧が修行の過程で煩悩に惑わされないよう、美しい女性の朽ちていくさまを表し、肉体の不浄/無常を説くためのものであったという。

 九相を不浄として扱うのでなく、違ったようにとらえたいと語る江口は、一般的にネガティブなものとして考えられがちな「死」を「生のための死」とポジティブに変換し描いている。生と死、愛らしさと不気味さなど相反しながらも共存しているこの世界を観想し、キャンバスに向かい表現する江口の作品世界に注目してほしい。