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ブリコラージュ
Bricolage
フランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロースが著作『野生の思考』(1962)で提示した概念。器用仕事。レヴィ=ストロースは同書で、近代西洋の科学的思考からは単純で粗野な「未開人」と見なされてきた非西洋の先住民が、実際には自然現象や動植物を分類・秩序づけする独自の体系を持つことを報告した。神話的・呪術的な性格を持つこの思考様式は、近代科学とは区別されるもうひとつの科学として「具体の科学」と呼称され、レヴィ=ストロースはその形態を「ブリコラージュ」になぞらえて説明している。
フランス語の動詞「ブリコレ bricoler」は、ボールが跳ね返る/犬が迷う/馬が障害物を避けて直線から逸れる、といった「非本来的な偶発運動」をあらわす語である。ここから示唆されるように、ブリコラージュとは、計画的に準備されていない、その場その場の限られた「ありあわせの」道具と材料を用いてものをつくる手続きを指す。この仕事に従事する者はブリコルール(器用人)と呼ばれる。
ありあわせの材料は個々に独自の来歴を持ち、それらが元々担っていた用途の形跡や、転用の過程で施された変形などが介在しているために、それらの資材群を配列するブリコルールの選択肢は限定されたものとなる。これは神話的思考を特徴づける側面でもある。神話の構成単位もまた限定的であり、「すでに使われた」ものであるが、同時に「まだ使える」ものである。用途や意味の制約と、新たな組み替えの可能性が示すのは、ブリコラージュにおいて使用される諸要素の「記号」的な性質である。
この概念の領域越境的な適用例としては、ディック・ヘブディッジの文化研究における表象分析的なアプローチなどがある。ヘブディッジは著作『サブカルチャー』(1979)においてブリコラージュの記号論的側面に着目し、様々なシンボルや既製品を自然化された文脈から盗用・変形するサブカルチャーのスタイルを考察している。
フランス語の動詞「ブリコレ bricoler」は、ボールが跳ね返る/犬が迷う/馬が障害物を避けて直線から逸れる、といった「非本来的な偶発運動」をあらわす語である。ここから示唆されるように、ブリコラージュとは、計画的に準備されていない、その場その場の限られた「ありあわせの」道具と材料を用いてものをつくる手続きを指す。この仕事に従事する者はブリコルール(器用人)と呼ばれる。
ありあわせの材料は個々に独自の来歴を持ち、それらが元々担っていた用途の形跡や、転用の過程で施された変形などが介在しているために、それらの資材群を配列するブリコルールの選択肢は限定されたものとなる。これは神話的思考を特徴づける側面でもある。神話の構成単位もまた限定的であり、「すでに使われた」ものであるが、同時に「まだ使える」ものである。用途や意味の制約と、新たな組み替えの可能性が示すのは、ブリコラージュにおいて使用される諸要素の「記号」的な性質である。
この概念の領域越境的な適用例としては、ディック・ヘブディッジの文化研究における表象分析的なアプローチなどがある。ヘブディッジは著作『サブカルチャー』(1979)においてブリコラージュの記号論的側面に着目し、様々なシンボルや既製品を自然化された文脈から盗用・変形するサブカルチャーのスタイルを考察している。
参考文献
クロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』(大橋保夫訳、みすず書房、1976)
ディック・ヘブディジ『サブカルチャー――スタイルの意味するもの』(山口淑子訳、未來社、1986)