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アンリ・ルソー

Henri Rousseau

 アンリ・ルソーは1844年フランス・ラヴァル生まれ。正式な美術教育を受けていない日曜画家で、素朴派を代表するひとり。パリ市の入市税関に勤めながら、余暇を利用して40歳頃から本格的に絵画を描き始め、84年にルーヴル美術館での模写の許可を得る。85年にサロンに初出品するも落選。86年、無鑑査の公募展「アンデパンダン展」に《カーニヴァルの晩》(1886頃)ほかを出品し、以降、同展で発表を続ける。93年に入市税関を退職し、子供たちに音楽を教えることで生計を立てながら絵画制作に専心。当初は、遠近感のない稚拙な作品として理解されなかったが、晩年には素朴派の名づけ親である批評家のヴィルヘルム・ウーデをはじめとして注目されるようになり、また、1908年にはパブロ・ピカソがルソーをたたえるために、アトリエ「洗濯船」で仲間を集めて一夜の宴を開いた。代表作に《風景のなかの自画像》(1890)、《眠るジプシー女》(1897)、《蛇使いの女》(1907)など。背景を完成させた後に人物像を描き込む制作方法を用い、とくに異国の密林を舞台にした神秘的な作品が多い。密林風景は、メキシコ出兵に従軍した際の記憶がもとになっているという一説があるが、メキシコの遠征軍から聞いた体験談や、パリの植物園に着想を得た説が有力とされている。1910年没。