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イリヤ&エミリア・カバコフ

Ilya and Emilia Kabakov

 イリヤ・カバコフ(1933年生まれ)とエミリア・カバコフ(1945年生まれ)は旧ソ連(現・ウクライナ)・ドニプロペトロウシク出身。イリヤはスリコフ記念国立モスクワ芸術大学を卒業後、挿絵画家となって生計を立てる。旧ソ連では芸術表現は政府の監視下にあり、前衛的な作家たちは自由な活動を制限されていた。イリヤもそのひとりであり、児童書などの挿画を手がける傍らで絵画やドローイングを制作し、地下に身を潜めながら非公式で芸術活動を続けていた。

いっぽう、エミリアはモスクワで音楽と文学を学んだ後、1973年にイスラエルに移住。75年よりニューヨークにてキュレーターを務める。85年、イリヤがスイスのベルン美術館で初の海外個展を開催。旧ソ連特有の生活を風刺的に再現した「トータル・インスタレーション(総合空間芸術)」で注目を集め、87年にオーストリアに移住して西欧での活動を本格化させる。89年にはエミリアとの共同制作を開始。ふたりは92年に結婚し、ニューヨークに活動拠点を移す。93年には第45回ヴェネチア・ビエンナーレにロシア館代表作家として出展し、高い評価を得る。その後も、絵画やオブジェ、音楽、時には鑑賞者の行動を予想しつつ構成した寓意的な空間「トータル・インスタレーション」を世界各地で展開。代表作のひとつ《自分の部屋から宇宙に飛び出した男》(1985〜88)や《決して何も捨てなかった男》(1988)などいずれの作品も、抑圧された社会で生きた自身の経験や記憶と密接にあり、支配の渦中で生きた人々の物語を掬い上げることを重要なテーマのひとつとしている。

 日本では99年に初個展「シャルル・ローゼンタールの人生と創造」(水戸芸術館)が開催。2000年に大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ(新潟)に参加し、稲作の情景を詠んだ詩と、棚田で農作業をする人々の姿をかたどった彫刻作品《棚田》を出展(15年には同作品の新作として、《人生のアーチ》が組み込まれた)。04年に「私たちの場所はどこ?」展(森美術館、東京)が開催。08年に第20回高松宮殿下記念世界文化賞(彫刻部門)を受賞した。