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池大雅

Taiga Ikeno

池大雅筆 蘭亭曲水図屏風 秋社図屏風(部分) 1763頃 Mary Griggs Burke Collection, Gift of the Mary and Jackson Burke Foundation, 2015

 池大雅は18世紀に活躍した文人画家。1723(享保8)年、京都の町人の子として生まれる。その才能は早熟で、7歳のときに万福寺で書を披露し絶賛されている。37(元文2)年、亡き父の通称であった菱屋嘉左衛門を襲名し、扇屋を開いた。禅僧との交流のなかで大陸の文物にふれていた大雅は、文人趣味の扇絵を描いていたという。この前後に柳沢淇園と出会い、絵を学ぶ。20代の模索の時代には、指頭画(筆のかわりに手指を用いて描く)などにも挑戦した。やがて、旅行や登山が好きだった大雅は、自らの足で歩き実際に見た景色を数多く描き(真景図)、中国絵画の模倣に終わらない、のびのびと大らかな画風を確立し定評を得ていく。20代半ばには、淇園の仲介により、13歳の木村蒹葭堂が大雅に入門した。経済的な余裕はあまりなかったが、金銭には無頓着で、当時の文化人たちと親しく交遊し、自らの理想とする文人生活を送っていたとされる。71(明和8)年に与謝蕪村と描いた《十便十宜図》は、日本近世の文人画の双璧による記念碑的合作である。妻の玉瀾も文人画家であり、風変わりながら仲むつまじい夫婦の逸話が伝わる。76(安永5)年没。