1994年にフランスで策定された称号、「メートル・ダール(Maître d'Art)」は、日本の重要無形文化財保持者を基礎にした、「フランス版人間国宝」だ。熟練の技、ノウハウの希少性、工芸分野の革新への貢献を評価するもので、認定を受けた者はその技術を弟子に継承する使命を負う。
フランス国内の工芸分野においてもっとも権威あるこの称号の認定者は、2016年現在、124人となっている。本展では、メートル・ダール認定者を中心に、フランス芸術工芸世界を牽引する計15人の作家を招待。新作を含めた約230件を展示する。作家は以下の通り。
ジャン・ジレル(陶器)、エマニュエル・バロワ(ガラス)、セルジュ・アモルソ(革細工)、クリスティアン・ボネ(鼈甲細工・メガネ)、ファニー・ブーシェ(銅板彫刻)、リゾン・ドゥ・コーヌ(麦わら象嵌細工)、ロラン・ダラスプ(金銀細工)、ジェラール・デカン(紋章彫刻)、ミシェル・ウルトー(雨傘・日傘)、シルヴァン・ル・グエン(扇)、ナタナエル・ル・ベール(真鍮細工)、ロラン・ノグ(エンボス加工)、フランソワ=グザヴィエ・リシャール(壁紙)、ピエトロ・セミネリ(折り布)、ネリー・ソニエ(羽根細工)。
本展の監修・空間デザインを務めるのは、現在アルゼンチンのフランス大使館に在籍し、14年に21_21 DESIGN SIGHT(東京)でイッセイミヤケとのデザイン展を手がけたエレーヌ・ケルマシュテールと、エストニア国立博物館の設計に携わるなど、世界的に注目されている建築家のリナ・ゴットメ。さらに、ベタンクールシュエーラー財団とフランス国立工芸研究所という、権威ある2つの団体が本展を支援している。
伝統を継承し革新していく作家たちが揃う本展は、暮らしのなかにある美に気づかせてくれると同時に、日仏の伝統工芸の世界をつなぐ第一歩となるだろう。