有識者が選ぶ2023年の展覧会ベスト3:髙木遊(キュレーター)

数多く開催された2023年の展覧会のなかから、有識者にそれぞれもっとも印象に残った、あるいは重要だと思う展覧会を3つ選んでもらった。今回は金沢21世紀美術館学芸員であり、The 5th floorやキュラトリアル・コレクティヴHB.としても活動する髙木遊のテキストをお届けする。

文=髙木遊(キュレーター)

EASTEAST_TOKYO 2023より
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 今年は兎にも角にも、展覧会をつくりにつくった一年であった。関わり方に差はあれど、8本の展覧会に携わることができた。美術館、オルタナティブスペース、芸術祭、通年授業の成果展覧会、新たなアートスペースの立ち上げ、形は違えど様々な「展覧会」。しかし実践の数に反比例して、訪れることができた展覧会は極端に少なく、12月10日現在で、47本に過ぎない。そして、訪れることが叶った展覧会のどれもが、現在進行系でプロジェクトを共に行っている作家によるもの、自身が関わるスペースのもの、リサーチの旅にて出会ったものと、かなりワーカーホリックなラインナップであった。くわえて、金沢在住にも関わらず、訪れた展覧会のほとんどが東京開催であった点は自身のリサーチ方法を再考しなければならない。来年こそは数々の展覧会を訪れたい。それほどに「展覧会」はキュレーターにとって重要なのだ。

資料館 戦没学徒記念館 常設展示(戦没学徒記念 若人の広場公園/2015年3月7日‐現在)

戦没学徒記念 若人の広場公園 出典=https://www.city.minamiawaji.hyogo.jp/site/wakoudo/

「展覧会」には「場」が必要だ。「場」がそこにあり続け、「展覧会」がいま見れるということに感謝した。

 丹下健三設計の高さ25メートルある鎮魂の塔「慰霊塔・永遠のともしび」を中心に、戦没学徒の遺品など様々な物品を展示することを目的としていた資料館「戦没学徒記念館」および宿泊施設「大見山荘」が併設されている。しかし、観客数の大幅減少を原因として1994年に閉館され、さらに阪神・淡路大震災により被害を受け、以来10年以上放置された。その後、資料館等に展示されていた遺品類は2004年、立命館大学国際平和ミュージアムへ寄贈され、2005年8月には慰霊碑の基部にある「永遠の灯(ともしび)」が修復され点灯されるなどの動きがあったものの、施設は立ち入り禁止で荒れ果て廃墟関連の書籍やサイトに掲載されるまでになっていた。その後、南あわじ市が土地を購入し都市公園「若人の広場公園」として再整備され、2015年3月に再開園した(Wikipediaより引用。最終アクセス2023年12月10日)。

こう、こう、こう(The 5th floor/2023年10月20日‐11月5日)