マンガもゲームも映画もアイディアの宝庫。京都精華大から届いたブックリスト

全国の美大図書館司書による選書を紹介する「美大図書館の書架をのぞく」シリーズは、アートをもっと知りたい、アートも本も好きな読者に向けた連載企画。第4回目は、マンガ学部をはじめとしたユニークな学部編成でも知られる京都精華大学の情報館におすすめの本を聞いた。

京都精華大学情報館(外観)
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 全国の美大図書館司書によるおすすめの本を紹介する「美大図書館の書架をのぞく」シリーズは、アートをもっと知りたい、アートも本も好きな読者に向けた連載企画。第4回目は、マンガ学部をはじめユニークな学部編成でも知られる京都精華大学にフォーカスした。

 京都精華大学は1968 年に短期大学として洛北の地に誕生。79年に美術学部を有する4年制大学となって以降、89年に人文学部、2006年にデザイン学部とマンガ学部、13年にはポピュラーカルチャー学部、21年には国際文化学部とメディア表現学部を開設するなど、学問の領域を開拓し続けてきた。現在は、約4000名の在校生と専任教職員約200名を抱えている。

 京都精華大学情報館は、大学図書館機能を持つ複合施設として、それまでの図書館から名称を変更し、1997年に開館。図書資料約24万冊、雑誌資料約900タイトル、マンガ雑誌90タイトルをはじめ、多様な学部編成に応じた幅広い資料を所蔵している。そんな京都精華大学情報館から届いたブックリストを紹介する。

つくる人向けの本

佐藤誠二朗・著 / 矢沢あい・画『ストリート・トラッド : メンズファッションは温故知新』

佐藤誠二朗・著 / 矢沢あい・画『ストリート・トラッド : メンズファッションは温故知新』(集英社、2018年)

 メンズファッションのなかでも、若者が着こなすストリートファッションを取り上げた一冊。1930年代に遡り、現在までの各時代にヨーロッパ、アメリカ、日本で生まれたファッションを通して、若者たちが社会や政治に訴えたものは何か。なぜ「温故知新」としてストリートファッションの流行は蘇生するのか。身近なアートとカルチャー、その歴史に潜む謎を解き明す内容になっています。

「いま、読んでほしい」本

オリガ・グレベンニク・著 / 渡辺麻土香、チョン・ソウン・訳『戦争日記 : 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』

オリガ・グレベンニク・著 / 渡辺麻土香、チョン・ソウン・訳『戦争日記 : 鉛筆1本で描いたウクライナのある家族の日々』(河出書房新社、2022年)

  戦争の悲惨さを描くルポルタージュは枚挙にいとまがないですが、この本にはいままさに2国間で交戦中のウクライナの戦地、とりわけ激戦の市街地に居住していたある家族の物語が詰まっています。飢え、寒さ、不眠、苦悩、怒り、嘆き、恐怖のなかで、夫と幼い子供たちとともに「私」はどうやって生きてきたのか。短い言葉を添えた絵日記が、静かに語りかけます。

 アート入門にぴったりな本

原田マハ、高橋瑞木『すべてのドアは、入り口である。 : 現代アートに親しむための6つのアクセス』

原田マハ、高橋瑞木『すべてのドアは、入り口である。 : 現代アートに親しむための6つのアクセス』(祥伝社、2014年)

 元キュレーターで小説家の原田マハと、学芸員の高橋瑞木が現代アートについて対談形式で語った内容をまとめたもの。6つの章(ドア)に分けて、現代アートにアクセスするきっかけとなるアーティストを紹介。美術館の詳細や6つ目のドアにいたっては、神社と現代アートの関係にも触れています。

 「現代アートってわかりにくいよね」と難しく感じてしまいがちですが、読めば「そんなに難しく考えることもないのかも」「現代アートも見に行ってみようかな」と思わせてくれる読みやすい入門書です。

読むのではなく、「見る」本