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サー・ジョン・ソーン博物館の心臓部。ドローイング・オフィスが200年の歴史を経て初公開へ

18世紀から19世紀のイギリスで、新古典主義を代表する建築家として活躍したジョン・ソーン卿。彼はまた、膨大な数の美術工芸品や絵画を集めたコレクターとしても知られている。その名を冠したサー・ジョン・ソーン博物館は、それらの貴重な品々をソーン卿自らが設計した元自宅兼仕事場内に文字通り所狭しと並べた興味深い場所だ。そしていま、当時弟子たちの作業場としてつくられたドローイング・オフィスと呼ばれるスペースが、同博物館の200年近い歴史で初めて一般公開されている。

文=坂本みゆき All Photos by Gareth Gardner

サー・ジョン・ソーン博物館のドローイング・オフィス内部

若き建築家たちのための新たな場所

 サー・ジョン・ソーンズ博物館は、地下鉄ホルボーン駅から歩いて数分のリンカーンズ・イン・フィールズと呼ばれる緑が美しい小さな公園を囲む一角にある。ことの始まりは1792年。その年にソーン卿は同博物館の一部となる12番地の建物を自宅兼オフィスとして購入した。それは当時彼が手がけていたイギリスの中央銀行であるイングランド銀行の建築現場から近く、また教鞭をとっていたロイヤル・アカデミー(当時は現在サマセット・ハウスとなっている場所にあった)からも至近という好ロケーションだったからと言われている。

 1806年に隣の13番地を、そしてさらに1823年には14番地も手に入れる。三軒をつなげる大々的な改装の際に、スタジオスペースともいえるドローイング・オフィスを新設することになる。当時ソーン卿のオフィスでは建築を学ぶ学生たちが多い時には6人もアシスタントとして1日12時間、週6日勤務しており、彼ら専用の仕事場が求められていたからだ。

 その場所は、ピクチャーズルームと呼ばれる18世紀の画家ウィリアム・ホガースをはじめとする名画がずらりと並ぶ部屋と、2フロアを吹き抜けにして天井をドームが覆ったエリアを結ぶ、高い天井を持つ部屋の中二階としてつくられた。床は鉄の柱とコリント式の柱に支えられており、いまみても非常にユニークな設えとなっている。

ドームのあるスペースからピクチャーズルームを望む。装飾的なコリント式の柱がドローイング・オフィスの床を支えているのがわかる。その外側に同様の役目を担う黒い鉄の柱も見える

 「この部屋は日夜ソーン卿の手足となっていた若い建築家たちが働く、ソーン卿のオフィスの心臓部ともいえる場所でした。しかし残念ながら博物館のオープン時からこれまでまったく使われることも公開されることもない、いわば『眠れる美女』のような存在だったのです」と同館副館長のヘレン・ドレイは語る。

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