「デザインの裏」に迫る。「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」が東京ミッドタウンで開幕

「デザインを五感で楽しむ」をコンセプトに、今年で第14回目の開催となる「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2021」が、東京ミッドタウン内で開幕した。今年のイベントの見どころや関連イベントをレポートで紹介する。

建築・デザイン事務所noiz《unnamed-視点を変えて見るデザイン-》の展示風景より

 「デザインを五感で楽しむ」をコンセプトに、2007年より開催されてきたデザインイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」。その第14回目が、東京ミッドタウン内で開幕した。

 国内外の第一線で活躍するデザイナーが集まり、デザインの魅力や可能性を誰もが身近に体感できる同イベント。今回のキーワードは「デザインの裏」で、だれもが正解のない問題に向き合わなければならない日々が続くなか、様々なデザインコンテンツを通してそのヒントに出会える体験を目指している。

 今年のイベントは、7つのメインコンテンツによって構成。それぞれの見どころをオフィシャルなおすすめ鑑賞ルートをもとに紹介していく。

 ミッドタウン・ガーデン入口から遊歩道を進むと、大日本タイポ組合による《ウラファベット》が登場する。木々の合間に出現する3枚の色鮮やかなフラッグは、一見するとごく普通のイラストに見えるかもしれないが、その裏側に回ると、そのなかにアルファベットが隠れていることがわかる。

大日本タイポ組合《ウラファベット》の展示風景より
大日本タイポ組合《ウラファベット》の展示風景より

 その先の芝生広場では、建築・デザイン事務所noizによる《unnamed-視点を変えて見るデザイン-》が展示されている。高さ約4メートルで、一見何気なく置かれているように見える3つの構造物だが、特定の位置から見るとラバーダックなどのシルエットが浮かび上がり、予想外のイメージを発見できる。

建築・デザイン事務所noiz《unnamed-視点を変えて見るデザイン-》の展示風景より
建築・デザイン事務所noiz《unnamed-視点を変えて見るデザイン-》の展示風景より

 芝生広場から続く館内B1階のアトリウムには数々の「窓」が出現。これは、YKK AP株式会社とデザイナー・鈴木啓太が提案し、3Dプリンタによって実現した《未来をひらく窓―Gaudi Meets 3D Printing》だ。

 同作は、スペインの建築家アントニ・ガウディの窓に学び、自然環境と呼応する様々な機能や素材、造形をもった未来の窓のプロトタイプ。本展では、ガウディの窓に見られる「光」「風」「音」の要素に着目した3つのタイプが展開されている。例えば、「太陽と月の窓」は、ガウディの「コロニア・グエル教会」の窓で採用した開閉機構から着想を得たもので、窓の透過部は、光の強さに応じて色が変化する。

YKK AP株式会社+鈴木啓太《未来をひらく窓―Gaudi Meets 3D Printing》の展示風景より、手前は「太陽と月の窓」
YKK AP株式会社+鈴木啓太《未来をひらく窓―Gaudi Meets 3D Printing》の展示風景より、「風が巡る窓」

 館内の2階と3階に上がると、東京を舞台に様々なジャンルの作品が集まる「DESIGNART TOKYO」から2組のクリエイターの作品が登場する。

 ひとつは、デザイナー/アーティスト・進藤篤の《BLINK》。富山県で生み出されたヘチマ、岩崎石、ガラスの3つの素材を新たな姿に発展させたこの作品では、富山の自然の恵みを感じとりながら、デザイナーが素材と出会った際の感動を体感することができる。

進藤篤《BLINK》の展示風景より

 もうひとつは、池田美祐と倉島拓人によるデザインユニットM&Tの《L.F.M.》だ。「L.F.M.」とは「Leather Fiber Molding」の略語で、廃棄されてしまう床面の削り屑を主原料として、立体的に形成するプロセスを指す。本展では、通常廃棄される皮革端材と、それを再利用して制作した立体作品を紹介している。

M&T《L.F.M.》の展示風景より

 館内の5階では、21_21 DESIGN SIGHTにて開催中の「ルール?展」と多摩美術大学 TUBによる連携企画展「制約のデザイン 創造性を誘発する課題たち」が開催。また10月26日と27日には、今年の「DESIGN TOUCH」で作品を展示しているクリエイターをゲストに迎えるトークセッションがオンライン配信にて開催される。

 「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2021」と同時に、様々な関連イベントも開催。《ウラファベット》と《unnamed》のあいだにある芝生エリアでは、「未来の学校 -OPEN STUDIO- “みらいのピクニック展” わたしたちの新しいコモンズ」(〜11月3日)が展開されている。

 ベルギー人アーティスト、イーフ・スピンセマイユが世界中で展開し、鑑賞者が自由に座ったり遊んだりすることができる《Rope》、体験者がスマホからウェブサイトにアクセスし、マイクに向かって息を吹きかけることで、オンラインから現地にシャボン玉を飛ばすことができる参加型インスタレーション《Air on Air》、そして様々な言葉やヒントが書かれているピクニック・シートに寝込んで思いを馳せる《PICNIQ Sheet》の3作を通し、世界的なパンデミックによる新しい日常について考えることができる。

「未来の学校 -OPEN STUDIO- “みらいのピクニック展” わたしたちの新しいコモンズ」の展示風景より、左から《PICNIQ Sheet》、イーフ・スピンセマイユ《Rope》
「未来の学校 -OPEN STUDIO- “みらいのピクニック展” わたしたちの新しいコモンズ」の展示風景より、アーティスト・筧康明がスマホを操って《Air on Air》の説明を行っている

 また、東京ミッドタウンが主催し、今年で14回目を迎えたデザインとアートのコンペティション「TOKYO MIDTOWN AWARD 2021」の受賞・入選作品も東京ミッドタウンのプラザB1にて展示。今年は全1366点の応募作品のなかからアート6作品とデザイン10作品が選出されており、展示期間中には一般投票で人気作品を選出する「オーディエンス賞」も実施予定となっている。

「TOKYO MIDTOWN AWARD 2021」アートコンペのグランプリ受賞作品、丹羽優太+下寺孝典《なまず公園》
「Tokyo Midtown Award 2008」デザインコンペで審査員特別賞(水野学賞)を受賞した鈴木啓太がデザインした「TOKYO MIDTOWN AWARD 2021」のトロフィー

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