渋谷の新たな待ち合わせスポットとして、2019年12月に複合施設「渋谷フクラス」にオープンした「GMOデジタル・ハチ公」。同スペースが、新たに「世界一小さな美術館@GMOデジタル・ハチ公」として生まれ変わった。
9月5日にオープンしたこのアートスペースでは、「Banksy Artworks from Masatoshi Kumagai Collection(バンクシー展)」をこけら落としとして開催。運営会社・GMOインターネットグループ代表の熊⾕正寿のコレクションから、バンクシーを語るうえで欠かせない代表作とも言える《風船と少女》(2004)が展示されている。
風で飛んでいく赤いハート型の風船に向かって手を伸ばしている少女が描かれ、2002年にロンドンで生まれたあと、バージョンを変えながら世界中の街角に現れてきたこの作品シリーズ。18年のサザビーズ・ロンドンでの落札直後、同シリーズの作品がシュレッダー付きのフレームによって切り刻まれ、⼤きな話題となったことはまだ記憶に新しい。
今回展示されているのは04年に制作された150点のうちのひとつで、熊谷は今年2月に購入。作品左下には関係者への販売時のみ入れられる、希少性の高いハートマーク付きのサインが施されている。作品が収められたフレームは、3Dプリンターなどを用いてサザビーズで切り刻まれた作品のフレームを極限まで近づけて再現している。
展覧会は、同作とバンクシーの制作活動を紹介するスペシャルムービーの2部構成。1回の鑑賞時間は約20分。
会場に入ると、入口付近にある幕が降り、3面の巨大スクリーンでスペシャルムービーが上映。上映後には正面のスクリーンが上がり、展示室の壁に《風船と少女》が現れる。鑑賞者は近距離で作品を鑑賞し、また作品や両側のスクリーンに映し出される映像と記念写真を撮ることができる。
同グループ代表の熊⾕はアートコレクターとしても知られており、世界有数のジュリアン・オピーの作品コレクションを持っている。そのコレクションには、バンクシーの《少女と爆弾》《花束を投げる男》や、アンディ・ウォーホル、アレックス・カッツ、ダミアン・ハーストなどのアーティストの作品も含まれている。
同グループは、15年に第1本社があるセルリアンタワーで「熊⾕コレクション〜オフィスとアートの新しい関係〜ジュリアン・オピーの世界」展を開催し、オフィスを⼀般公開することで多くの鑑賞者に作品と触れる機会を提供した。
今回の「世界一小さな美術館」をオープンさせる背景には、熊⾕による次のような思いが込まれている。「当社グループのお客様にナンバーワンのサービスをご提供するために、パートナー(従業員)は感性を磨かなくてはならない。本物、美しいものに自然と触れ、豊かな感性を磨く機会をつくる」(展覧会リリースより)。
世界中の多くの人々に愛されるバンクシーの代表作に触れ、そしてスペシャルムービーを通してその活動を知る機会をお見逃しなく。
※2021年9月6日追記:熊⾕正寿のコレクションについて加筆しました。