東京・銀座のGALLERY HAYASHI + ART BRIDGEで、アーティスト・小野久留美の個展「発光体」が11月26日〜12月17日の会期で開催される。
小野は1995年栃木県生まれ。2019年にロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズのファイン・アート学部を卒業。現在は東京と栃木を拠点に制作・発表を続ける。2021年に同ギャラリーで行われた個展「C(h)ronos」をはじめ、これまではアートフェア東京(2022)や3331 アートフェア(2021)などのアートフェアに参加しており、ロンドンやロシア・ソチで開催されたグループ展でも作品を発表してきた。
小野は、「この世に存在するかたちあるものを、その姿のまま永遠に留めて おきたい」という人々が持つ願望に対して、「かたちがあるものは時とともにいつかは崩れ、変質していく無常なるものだ」というコンセプトのもと作品制作を行う。自然の摂理である「変化」と、永遠に留めておきたいという人間の 「保存」に対する欲望を作品 制作を通じて可視化している。
「紙に印刷された写真を土に埋める」という手法を介して、変化する世界のいち場面を留めたはずの「写真」が、土中の水分と菌類によってその姿を変えていく。また、土中に存在する自然の力によって作品はつねに変化しており、掘り起こされた写真からは無常に抗う保存への憧憬が感じられる。
小野の制作にとって重要な媒介である土中の菌類や微生物が生物発光することは少なくない。今回の個展「発光体」は、紙に印刷された写真が土のなかに埋められるとき、そこに生息する生物とともに夜な夜な発光するということから着想を得ている。また、掘り起こされた写真にも土中の水分や日光の光でキラキラと発光しているような感覚がつきまとい、元の写真には存在していなかった、ほんのりと光を放っているような痕跡が多数刻まれている。
今回の展覧会について、小野はステートメントで次のような言葉を寄せている。「写真に撮って固めた現象を、土中の中で再び動かす、という行為はこの目で直接見ることが叶わないので、掘り起こした紙に刻まれた痕跡や模様、新たな色などから、土の中での出来事を想像するのがとても楽しくワクワクさせられっぱなしだ」。
なお小野は、紙の種類や大きさを変えることや、スタジオ敷地内の異なる場所で作品を埋めることなど様々な実験に挑戦し続けている。来年以降は自身の生まれ育った場所だけでなく、別の場所にも写真を埋めて制作することを模索しているという。
土中から顔を出した写真が、輝きを増し発光しているように見える作品をぜひ会場で目撃してほしい。