愛知県・名古屋にあるBDギャラリーが、アーティスト・大西晃生の新作個展「大切な人たち(ではない)」を開催する。会期は8月12日〜9月6日。
大西は1996年岡山県生まれ。2019年に京都精華大学デザイン学部イラスト学科イラストコースを卒業。ストックフォトなどから選んだポートレートを印刷・加工したものを撮影し、それをもとに絵画作品を描くという手法で、インターネットにおける情報の真偽やイメージの虚構性をテーマに制作している。
2018年にCAF賞入選、2020年にシェル美術賞入選。近年は「I’m tired」(GALLERY KTO、東京、2022)、「paper craft (human)」(GALLERY KTO、東京、2021)、「paper craft」(KUNST ARZT、京都、2021)などの個展を開催し、「ディスディスプレイ」(CALM&PUNK GALLERY、東京、2021)、「シェル美術賞展 2020」(国立新美術館、東京、2020)などのグループ展に参加した。また、今年9月に自身初となるアートフェア「アートフェアアジア福岡2022」での出展(GALLERY KTO)も予定している。
本展では、前述の基本的な制作プロセスは変わらず、個々の作品タイトルはこれまでとは違う考え方でつけられたという。
例えば、2018年より制作している「still life」シリーズの作品は、制作順に「#1」「#2」「#3」など作品に番号をつけて管理していく、ある種作品と少し距離をとるようなタイトルがつけられている。
いっぽうで今回の個展では、番号でタイトルをつけるのではなく、「幼馴染」「友人」「恋人」など作家自身にとって親しい人間や大切な人たちと思われるタイトルをつけている。しかし、作品で使用されるのはストックフォトから収集したポートレートであり、作家自身とは何ら関係のない人々。これにより、描かれたイメージとタイトルとの関係、あるいは情報の真偽について絵画を鑑賞するという形式を通して問うことを目指しているという。
いつの時代も世の中が不安定な状態に陥るとデマやフェイクニュースといった不確かな情報が溢れます。SNSの登場以降、その拡散スピードは段違いのものとなり強い感情を呼び起こすコンテンツは正確な情報でなくとも反射的に拡散され広まる傾向にあります。もしくは歴史的な偉人の肖像画だと教えられてきたものが実は別人だったという話のように、自分たちが信じてきたものが急にひっくり返る瞬間があります。
本作は作家にとって大切な人たちをモチーフとした展覧会、というていで誰一人知らない人物を描いた展覧会であり、さらに印刷物を描いているので人物のイメージではありますがあくまで表面的なイメージだけが立ち現れているという状況が描かれています。モチーフに亀裂のように入ったシワはその表面的な虚構のイメージを破壊する象徴として入れています。今日、何が事実で何が嘘なのか日に日に複雑となっていく中で、絵画の鑑賞においても描かれているイメージや作品情報を何気なく鵜呑みにするのではなく、一歩引いた視点から鑑賞する事を提示できればと考えています。(ステートメントより抜粋)