日本橋三越本店三越が2017年に発信する「あたらしい工芸」とは?

日本が世界に誇る工芸の魅力を現代アートとして紹介する展覧会「あたらしい工芸 KOGEI Future Forward」が2月15日より日本橋三越本店で始まった。日本の伝統工芸が連綿と受け継いできた技術と、現在の表現を融合させた15作家が参加する本展の狙いとは。

「あたらしい工芸」展会場風景

 「あたらしい工芸 KOGEI Future Forward」は、2020年に開催される「東京オリンピック・パラリンピック」を前に、日本の「工芸」をより自由なかたちでとらえ、「現代美術」として作品を発表する作家たちを集めた展覧会だ。開催に先立ち、三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長執行役員・大西洋は「時代とともに伝統工芸というものは大きく変わってきています。新しい工芸というものを若い人たちにプレゼンテーションしていきたい」と挨拶を行った。

三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長執行役員・大西洋

 本展の監修を務めたのは、2012年に金沢21世紀美術館で「工芸未来派」展を、また15年にはニューヨークのアート&デザイン美術館で「工芸未来派(Japanese Kogei | Future Forwrd)」を手がけた金沢21世紀美術館館長で東京藝術大学大学美術館館長の秋元雄史。初日には、ゲストのタレント・篠原ともえが登壇し、展覧会についての特別対談を行った。

 秋元は本展のテーマとなっている「あたらしい工芸」というキーワードについて、「現代美術だけど、伝統的な技術によって生まれているということ。そうした技術をベースに、現代から未来へと向かう時代のイメージと向き合うことで生まれる、作家の独自性が表れた工芸のこと」と定義。これに対して篠原は、「新しい伝統は、技術を新しくするというよりも、身に着けるかたちや、持ち歩くかたちにしたりする、アイデアをプラスすることによって、もっと見やすくなると思います」と独自の視点から語った。

(左から)秋元雄史、篠原ともえ

 また秋元は工芸のアップデートについて次のように話す。「伝統的な技術そのものは大事だけど、今の時代に生かしていくことをもっとしていかないといけない。アートとして蘇る、新しい可能性を見せていくということ。工芸には、アートとしての非日常性と、日々使っていく日常性があります。その両方を、どのように新しくしていくかが重要です」。

 2020年を前に、今後ますます世界からの注目を浴びるであろう日本の文化と伝統。秋元はこれを踏まえ、「日本は近代と前近代的なものがうまく調和している国で、実はこういう国はそんなにない。近代以前の文化はプリミティブなものとして考えられる傾向があります。ところが、日本の江戸時代までの文化は、非常に成熟していて、洗練されたものだった。日本は古いものと新しいものの両方を、洗練されたものとして同時に見せられる珍しい国だと思います。日本の伝統を、今の文化として発信したい」と本展に込めた思いを語った。

祖母がお針子だったという篠原が注目したのは土屋順紀の《紋紗帯地「迦楼羅」》

 本展では、艶やかな白磁で有機的なかたちをつくりだす青木克世や、大胆な造形とポップな色彩で陶芸の可能性を広げる桑田卓郎、《ヒールレスシューズ》で世界から注目を集める舘鼻則孝など15作家が一堂に集結。伝統文化から継承した技術力によって、これまでにない表現を生み出す「あたらしい工芸」の今を堪能したい。 

編集部

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