高山明(Port B)が「新・東京修学旅行プロジェクト」で提示する「難民が見た東京」

2017年に創設された川村文化芸術振興財団の日本初となるソーシャリー・エンゲイジド・アート(SEA)に対する支援助成事業。この第1回助成対象プロジェクトの贈呈式と記者会見が東京・麻布の国際文化会館で行われた。

高山明

 昨年新たに創設された川村文化芸術振興財団のソーシャリー・エンゲイジド・アート支援助成は、国内で実施されるソーシャリー・エンゲイジド・アートプロジェクトに対して助成を行うというもの。初回となる2018年度は、日本国内外から67件(海外34件、国内33件)の応募があり、高山明(Port B)の「新・東京修学旅行プロジェクト」が選ばれたことで話題を集めている。

 この贈呈式と記者会見が東京・麻布の国際文化会館で行われ、高山と審査員を務めた秋元雄史(東京藝術大学大学美術館館長)、工藤安代(NPO法人ART&SOCIETY研究センター代表理事)、窪田研二(インディペンデント・キュレーター)、毛利嘉孝(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授)が参加した(高嶺格は欠席)。

左から工藤安代、窪田研二、高山明、秋元雄史、毛利嘉孝

 今回の助成対象となった「新・東京修学旅行プロジェクト」は、高山が過去2年にわたり行ってきた「東京修学旅行プロジェクト」の新しいバージョン。「東京修学旅行プロジェクト」は、アジアから東京に修学旅行に来た中高生がどこを回るのかを国ごとにリサーチ。コースを設定し、実際に旅をしてみるというもので、これまで台湾編、タイ編、中国編などを実施してきた。東京を別の視点から見直し、東京の中のアジア諸国、あるいはアジア諸国から見た東京を再発見するというものだ。

撮影=山岸剛

 この「国」という前提に立った「東京修学旅行プロジェクト」に対し、「新・東京修学旅行プロジェクト」は異なるアプローチを行う。それは、国民国家からはみ出した人々=難民を主体とするという点だ。本プロジェクトで高山は、クルド人やロヒンギャたちと数年にわたって築いてきた関係をベースに、難民の観点でツアーを構築するという。

 またこの難民を生み出す原因となっている「戦争」にもフォーカス。戦後70年が過ぎ、忘れかけられている日本での戦争の傷跡を、難民とともに共有し、東京を見直すことを目指す。

 なお、今回のプロジェクトでは難民を中心としたワークショップに一般参加者を募集。ワークショップの中で修学旅行のコースを設定し、難民がガイドする東京観光を実施する。また「旅のしおり」となるようなドキュメントも制作し、ウェブで公開することで、誰でもコースを追体験できるようになるという。

編集部

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