2009年に始まった「水と土の芸術祭」が、18年に4回目の開催を迎える。今回の総合ディレクターは、宇都宮美術館の館長を2017年3月まで務めた、美術評論家の谷新。芸術祭のコンセプトに「MEGA BRIDGE」を掲げ、プログラムを通じて自然や世界、社会などをつなぐことを試みる。
日本海側で唯一の政令指定都市である新潟は、古くは奈良・平安時代から、環日本海の港町として歴史的に大きな意味を持ってきた。開港150周年を翌年に迎える2018年。今回は、日本や周辺国における街のアイデンティティを問い直すために、市民が中心になって展示やイベントを行う市民プロジェクトが、芸術祭の中心に据えられる。
過去にも積極的に行われ、一部が継続されてきた同芸術祭の市民プロジェクト。市民の自発的な提案に対し実行委員会は、これまでも行われてきた助成金の支給だけでなく、相談会の開催、地域拠点づくりを通して、後押ししていく。
アートプロジェクトのメイン会場は、新潟市街の中心に位置する万代島旧水揚場跡地。ここで展示するアーティストには、伊藤公象、岩崎貴宏、遠藤利克、大西康明、塩田千春、ナウィン・ラワンチャイクン、松井紫朗が名を連ねる。
「芸術祭名にもなっている水と土をより根源的な視点から見直し、『地水火風』の四元素によって生命が育まれることを、メイン会場の展示構成で表現していく」と谷は語る。
かつて万代島旧水揚場跡地は水産物の荷捌き施設として賑わい、幅90メートルにもなる広大なスペースとその外見から「大かまぼこ」と市民に親しまれてきた。場所性が強いこのメイン会場で、7人のアーティストがどのように生命や四元素を表現するのか、期待される。
また、会場のひとつであるNSG美術館では、日本・韓国・中国・ロシアの作家による「波」をテーマにした作品が展示される。アート・ディレクターを務める新潟市美術館館長の塩田純一は「政治的に分断と緊張が走っている現代の環日本海を、芸術祭を通じてつなげていきたい」と意気込みを語る。各国の作家がどのように日本海を表現するのか。その多様さを楽しみたい。
近隣国との緊張関係や特徴的な地理環境を前に、生活を営む市民たちが何を思い、何を表現しようとするのか。そこに現出するものは、県外や海外で暮らす人々にとっても、示唆的なものになるだろう。