絵本『スイミー』は、赤い色をしたきょうだいたちの中で、1匹だけ真っ黒な魚「スイミー」が主人公の物語。谷川俊太郎が翻訳を行った日本語版は小学校の教科書にも掲載され、世代を超え日本全国で親しまれている。本展は、その『スイミー』作者として知られるレオ・レオーニ(1910-1999)の創作世界を紹介する。
オランダ生まれのユダヤ人であるレオーニは、イタリアをはじめ欧米各地で活動した後、1939年にアメリカに亡命、グラフィックデザイナーとして活躍した。49歳で孫のために絵本を制作したことをきっかけに、絵本の世界に足を踏み入れた。この時制作し、59年に出版した『あおくんときいろちゃん』は、青と黄色の紙きれの友情を描いた作品で、抽象表現が初めて取り入れられた子供の絵本だとも言われている。
以降、40冊近くの絵本を世に送り出し、切り絵によるねずみが主人公の『フレデリック』や、いろいろな鳥の寸法を測るしゃくとりむしが描かれる『ひとあしひとあし』など、小さな主人公たちが「自分とは何か」を模索し、自分らしく生きることを学んでいく物語を、水彩、油彩、コラージュなどさまざまな技法を用いて描いてきた。
本展では、ヨーロッパとアメリカを移動し続けたレオーニの波乱の生涯と重ね合わせながら絵本原画を紹介するほか、アート・ディレクターとしての仕事、絵画、彫刻など幅広い活動を約200点の作品で紹介。レオーニが絵本に初めて抽象表現を取り入れるに至った道筋にも光を当てる。
なお、『スイミー』の原画では、スロヴァキア国立美術館所蔵の、幻とされた原画計5点も来日。これらの原画は、絵本『スイミー』の絵とは少し違った、原画ならではの特徴があるため、会場ではじっくりその違いも楽しみたい。