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2017.5.13

【期待のアーティストに聞く!】石井友人 もう一度、未来の空間を描いてみる

自身が生まれ育った郊外のニュータウンをテーマに制作を続ける、1981年生まれの石井友人。6月11日までMaki Fine Arts(東京・新宿)での個展を開催している作家に、作品について聞いた。

文=野路千晶

Photo by Fuminari Yoshitsugu

 カメラの手ぶれを思わせる幾重もの線と色彩が格子状のモチーフを描き出す石井友人の《未来の家》。本作は作家、鴫剛(しぎ・ごう)による団地の絵画と団地の絵画の写真からなる74年の作品《HOUSING D74-2》を引用している。石井はこの作品を「均一化していく空間への懐疑、情報化社会への警鐘が折り重なった作品」だと説明する。

 東京郊外のニュータウンに生まれ育った石井の原風景には、高度経済成長期における画一的な住まい・街並みがあるという。しかし、爆発的なインフラ整備とともに生を受けた都市や住宅の新陳代謝は、現在停滞した状態だともいえる。「原子力産業の破綻、2020年東京オリンピックの経済難など、20世紀に思い描いた未来像は様々な軋轢として現在あらゆるところに表出している。都市における住宅・家の問題は自分にとって身近な切り口となりました」。他方、作家がこれまで繰り返し描いてきた鉢植えの植物といったモチーフにも、ニュータウン的な環境は関係する。「鉢植えや植物園は自生の枠組みから切り離され、人為的に形成される。それは、本来の歴史とは無関係に地縁のない場所に人々が移住し、新たな都市を形成したニュータウンの歴史的背景と似ているような気がします」。植物は作家にとっての自画像なのだ。

 Maki Fine Artsにて5月13日から6月11日まで開催する個展「未来の家」では新作絵画、映像など約10点を展示する。「展覧会では、かつて夢見られた空間の中に、時間や記憶といった要素を見出すための試みをしています。普段意識化されることのない私たちの住まう世界をとらえ直すようなものになればと考えています」。

 (『美術手帖』2017年5月号「ART NAVI」より)