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切手に込めるは色彩豊かな「美術の世界」。切手デザイナー・楠田祐士インタビュー(前編)

日本全国誰でも一度が見たことがある切手は、日本郵便の切手・葉書室所属のデザイナー8名(2023年3月現在)によってデザインされている。馴染み深いはずなのによく知らない「切手デザイナー」という仕事について、イラスト切手から「美術の世界シリーズ」まで手がける最年少切手デザイナー・楠田祐士に話を聞いた。前編では、楠田が世に送り出した「美術の世界シリーズ」の誕生秘話とその魅力に迫る。

聞き手・文=望月花妃(ウェブ版「美術手帖」編集部) 撮影=稲葉真

 日本全国誰でも一度が見たことがある切手は、日本郵便の切手・葉書室所属のデザイナー8名(2023年3月現在)によってデザインされ、生み出されている。馴染み深いはずなのによく知らない「切手デザイナー」とは、一体どのような仕事なのか。

 イラスト切手から「美術の世界シリーズ」まで手がける、最年少切手デザイナー・楠田祐士に話を聞いた。前編では、楠田が生み出した「美術の世界シリーズ」の誕生秘話とその魅力に迫る。

美術の教科書のように楽しめる切手を目指して

──「切手デザイナー」という仕事を知ったきっかけは、楠田さんが手がけた「美術の世界シリーズ」でした。まず、この切手はどのようなきっかけでつくられたのかお聞かせください。

  切手の年間発行計画を考える段階で、「美術品を集めた切手をつくりたい」と私からリクエストしたのが始まりでした。

 もともと切手デザイナーになった当初から自分のなかに「THE・切手」のイメージがあって、そのひとつとして「美術の世界シリーズ」のような、日本美術の傑作を紹介するような切手をつくりたいと思っていたんですね。それも、1人の偉大な作家を取り上げるというよりは、いろんな作家の作品を紹介して対比できるオムニバス形式にしたいと考えていました。

 私は田舎育ちで、大きな美術館は近くになくて美術品を見に行く機会も少なかったので、代わりに、子供の頃からずっと美術の教科書を眺めていたんです。ルネサンスがあって、時代が過ぎていくと印象派やピカソがあって、現代アートの作品も出てくるといった、歴史を追いかける楽しみがある。テーマ別のページを読むのも好きでした。だから、つくるなら、こうした美術の教科書のような「ワクワク」が感じられる切手にしたいなと。

──美術の教科書を背景に、楠田さん独自の企画として生まれたんですね。

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