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ベルリンのクラブカルチャーの危機を現代美術で支える「STUDIO BERLIN」の試み

クラブカルチャーが深く根づいた都市、ドイツ・ベルリンだが、新型コロナウイルスでクラブも大きな打撃を受けた。こうしたなか、ベルリンを代表するクラブである「Berghain」と、プライベート・ミュージアムである「Boros Collection」が連携した展覧会「STUDIO BERLIN」を開催。この試みをレポートする。

文=日比野紗希

STUDIO BERLIN (c)Rirkrit Tiravanija, courtesy neugerriemschneider Berlin Photo by Noshe

 ベルリンでは、昨年の秋から続いた厳格なロックダウンの緩和に伴い、展覧会やイベントなども増え始め、観光客も街に戻ってきた。ベルリンの文化には欠かせないクラブでも、今年の夏は野外のパーティーが開かれ、ワクチン接種者、新型コロナウイルス感染症からの回復者限定で、室内でのクラブイベントの再開も予定されている。

 本稿では、ベルリンで行われた展覧会を中心に、音楽や現代アートなど分野を超えて展開する芸術の実践を紹介したい。

パンデミックによって打撃を受けたクラブカルチャー

 世界屈指のクラブカルチャーを誇る都市ベルリンにおいて、パーティーシーンは主要な経済・文化的要因のひとつである。約9000人を雇用し、国内外のフリーランス・アーティストを含めると数千人ものネットワークを持つベルリンのクラブカルチャーは、これまでに年間15億ユーロ(約1840億7000万円)の夜間観光収入を生み出してきた。観光客の4分の1にあたる年間300万人の目的はクラブといっても過言ではない。それゆえに、新型コロナウイルス感染症の影響で大きな打撃をうけたのも、クラブシーンであった。

 ロックダウン当初、ドイツの文化芸術支援にはポジティブな声もあがった。しかし、半年以上の閉鎖をよぎなくされたうえ、法的に「文化施設」として認められていないクラブの多くが国や州の支援の対象からこぼれ落ち、高騰する家賃や従業員への手当ての支払いをカバーできず、 窮地に立たされた(ナイトクラブやライブハウスはカジノや風俗店、ゲームセンターなどと同じく娯楽施設に分類されていた)。

 こうした経営の危機的状況に対し、クラブのオーナーや支援者らによる組織委員会「Clubcommission」はクラブの文化施設認定を目指し15カ月にわたってさまざまなキャンペーンを実施。その結果、2021年6月に連邦議会にてクラブやライブ・イベント会場を「文化施設」として再認定することが可決され、美術館やオペラハウスと同等の法的ステータスに変更となった。これによって、営業エリアの拡大や税制上の優遇措置の他、近年問題になっているジェントリフィケーションから保護される対象になるという。

現代美術とクラブシーンのあいだに生まれる連帯

 パンデミックの影響により、苦境に立たされたクラブシーンと現代美術の分野の連帯も生まれはじめた。

 例えば、2020年3月のロックダウン直後に、ヴォルフガング・ティルマンスが主体となり立ち上がった世界各国のアートスペースやクラブを支援するプロジェクト「2020Solidarity」では、世界で活躍する50人のアーティストが手がけたポスターの売り上げが、アート関連団体に寄付された。

 また、ベルリン屈指のクラブである「Berghain」と、プライベートミュージアム「Boros Collection」の協業のもと開催されている展覧会「STUDIO BERLIN」も注目の事例のひとつである。

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