EXHIBITIONS

堀内誠一 絵の世界

「堀内誠一 絵の世界」展 © Seiichi Horiuchi

堀内誠一 『ぐるんぱのようちえん』(1965) © Seiichi Horiuchi

堀内誠一 『ふらいぱんじいさん』(1969) © Seiichi Horiuchi

堀内誠一 パリ風景《ポン・ヌフ》(1978) © Seiichi Horiuchi

堀内誠一 写真提供=堀内事務所

 ベルナール・ビュフェ美術館が企画展「堀内誠一 絵の世界」を開催。伝説のアートディレクターであり、デザイナー、絵本作家でもあった堀内誠一(1932〜1987)の生誕90年を記念して、その「絵の世界」に注目する。

 堀内誠一は東京都出身。若い頃よりデザイナーとして研鑽を積み、雑誌づくりにおけるエディトリアルデザインの先駆者。『anan』創刊時には、ロゴ、表紙、ページネーションなどを手がけ、さらに海外取材を実施するなど、ヴィジュアル系雑誌の可能性を大きく広げた。

 絵本作家としては『あかずきん』『雪わたり』『くるみわりにんぎょう』など、20代半ばより生涯にわたり60冊を超える作品を世に出し、挿絵も数多く描く。1973〜81年にかけてはパリに暮らし、世界を巡って旅先の風景や地図を描き雑誌で発表するなど、多彩な表現に意欲的に取り組んだ。「絵本作家の道こそ運命が決めた本命」と本人が語ったように、その54年の人生は絵を描くことと、ともにあった。

 堀内は病弱だったことを理由に、小学校4年生のほぼ1年間を静岡県東部・沼津市片浜の養護学校で過ごしたこともある。ゆかりの地で開催される本展では、今回初公開となる10代の時に描いた油絵作品などを出発点に、絵本の原画、デザインにおける作画、雑誌のためのカットなど、堀内の創作の原点とも言える「描くこと」をひも解く。

 時に愛らしく、時に鋭くアヴァンギャルドな、堀内の絵の世界。戦後、激動する社会のなかで、「絵」というヴィジュアルが持つ力を、広告やデザイン、イラストなど様々な分野で発揮させた堀内の作品世界を見つめれば、20世紀という時代において、絵本や雑誌といったカルチャーがいかに変遷し、発展を遂げてきたかも浮き彫りになることだろう。