EXHIBITIONS
石川直樹「まれびと Wearing a spirit like a cloak」
写真家・石川直樹の個展「まれびと Wearing a spirit like a cloak」がamanaTIGPで開催されている。本展はタカ・イシイギャラリーでの「MOMENTUM」展(~3月12日)との同時期開催となる。
石川直樹は1977年東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。大学在学中から本格的な登山活動と写真制作を始める。北極や南極といった極地を踏破し、23歳の若さで七大陸最高峰の登頂最年少記録を更新。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。
世界各地を自らの足で旅しその軌跡を写真作品に収め、2008年『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)により日本写真協会賞新人賞、講談社出版文化賞。11年『CORONA』(青土社)で土門拳賞を受賞。20年『EVEREST』(CCCメディアハウス)、『まれびと』(小学館)により日本写真協会賞作家賞を受賞した。最新作に『STREETS ARE MINE』(大和書房)、『奥能登半島』(青土社)などがある。
本展では、日本の来訪神行事を記録した「まれびと」シリーズより作品18点を展示する。
仮面を身につけ異形の姿をとる神が人々に畏怖の念を喚起させ災厄を祓う儀礼は日本各地に多様な形で存在している。民俗学者の折口信夫(1887〜1953)は、時を定めて異界から訪れる神「まれびと(=客人)」を迎え入れる風習が古来、民間伝承として受け継がれてきたことを指摘したうえで、来客をもてなす伝統的慣習との結びつきを論じている。年に一度執り行われるこうした「まれびと」儀礼の一部は、2018年に「来訪神:仮面・仮装の神々」としてユネスコの無形文化遺産に登録された。
石川による写真シリーズ「まれびと」は、北は秋田県能代市の浅内集落から南は沖縄県の波照間島まで、時には悪天候に苛まれながらもカメラを携えて日本列島に点在する来訪神行事を10年以上にわたって撮り溜めてきた作品群だ。石川自ら共同体の内部へと溶け込み神々の後を追いかけ、一連の儀礼を写真に収めていった。
同シリーズに写し取られた、異世界から訪う「自分たちとは異なる存在」の原始的化身は、人々の豊かな想像力を反映するかのように多種多様な外見的特徴を有している。さらに、石川の写真は「まれびと」たちがもたらす非日常空間も色濃く写し出している。一連の儀礼が始まる前の静謐な風景の記録に加え、地域の男性たちが仮面や蓑、蔓草を纏い神へと姿を変えるあり様、そして地域住民たちの日常生活が営まれる空間にその姿を現し、空気を一変させる瞬間がとらえられている。
本展で展示されるこうした石川の写真群では、常世と現世が入り混じる特殊な場を追体験することができるだろう。世界最高峰を巡る登山活動や民俗学的フィールドワーク、そしてテクストの執筆といった多方面に広がる活動から培われた石川独自の多角的視座は、日本文化の根源や代々受け継がれてきた固有の精神性を浮かび上がらせる。
石川直樹は1977年東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。大学在学中から本格的な登山活動と写真制作を始める。北極や南極といった極地を踏破し、23歳の若さで七大陸最高峰の登頂最年少記録を更新。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。
世界各地を自らの足で旅しその軌跡を写真作品に収め、2008年『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)により日本写真協会賞新人賞、講談社出版文化賞。11年『CORONA』(青土社)で土門拳賞を受賞。20年『EVEREST』(CCCメディアハウス)、『まれびと』(小学館)により日本写真協会賞作家賞を受賞した。最新作に『STREETS ARE MINE』(大和書房)、『奥能登半島』(青土社)などがある。
本展では、日本の来訪神行事を記録した「まれびと」シリーズより作品18点を展示する。
仮面を身につけ異形の姿をとる神が人々に畏怖の念を喚起させ災厄を祓う儀礼は日本各地に多様な形で存在している。民俗学者の折口信夫(1887〜1953)は、時を定めて異界から訪れる神「まれびと(=客人)」を迎え入れる風習が古来、民間伝承として受け継がれてきたことを指摘したうえで、来客をもてなす伝統的慣習との結びつきを論じている。年に一度執り行われるこうした「まれびと」儀礼の一部は、2018年に「来訪神:仮面・仮装の神々」としてユネスコの無形文化遺産に登録された。
石川による写真シリーズ「まれびと」は、北は秋田県能代市の浅内集落から南は沖縄県の波照間島まで、時には悪天候に苛まれながらもカメラを携えて日本列島に点在する来訪神行事を10年以上にわたって撮り溜めてきた作品群だ。石川自ら共同体の内部へと溶け込み神々の後を追いかけ、一連の儀礼を写真に収めていった。
同シリーズに写し取られた、異世界から訪う「自分たちとは異なる存在」の原始的化身は、人々の豊かな想像力を反映するかのように多種多様な外見的特徴を有している。さらに、石川の写真は「まれびと」たちがもたらす非日常空間も色濃く写し出している。一連の儀礼が始まる前の静謐な風景の記録に加え、地域の男性たちが仮面や蓑、蔓草を纏い神へと姿を変えるあり様、そして地域住民たちの日常生活が営まれる空間にその姿を現し、空気を一変させる瞬間がとらえられている。
本展で展示されるこうした石川の写真群では、常世と現世が入り混じる特殊な場を追体験することができるだろう。世界最高峰を巡る登山活動や民俗学的フィールドワーク、そしてテクストの執筆といった多方面に広がる活動から培われた石川独自の多角的視座は、日本文化の根源や代々受け継がれてきた固有の精神性を浮かび上がらせる。