EXHIBITIONS

ACT(Artists Contemporary TOKAS)Vol. 4

接近、動き出すイメージ

齋藤春佳 影の形が山 2017

齋藤春佳 夢で見たうなぎいぬ/人が見たウナギイヌの話 2020

中澤大輔 還りたい、還りたくない 2021

中澤大輔 Passage Tells: Shibuya 2017

ユアサエボシ 自殺未遂 2016

ユアサエボシ 実験報告 2015

 トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)では、公募展や企画展、海外派遣などを通じて、段階的、継続的にアーティストの活動を支援している。

 2018年度に開始した「ACT(Artists Contemporary TOKAS)」は、TOKAS のプログラムに参加経験のある作家を中心に、注目すべき活動を行っているアーティストを紹介する企画展。今年で4回目となる本展は、時空間の構造を取り入れた絵画やインスタレーションを制作する齋藤春佳、物語活動家やデザイナーとしても活動を行う中澤大輔、そして架空の画家に擬態するユアサエボシの作品によって構成する。

 齋藤春佳は1988年長野県生まれ。東京都を拠点に活動。時間という概念を物体の運動エネルギーによる変化の総体ととらえ、出来事を時空間の構造と結び付けた絵画やインスタレーションを制作している。本展では、TOKAS本郷の建物が建造時に工期が遅れたこと、また1945年の空襲によって被災したことに着目し、建物の変化をテーマにした映像インスタレーションを発表。建物が建設され、消失し、修復によって再び現れるという時空間の変化を、発声される言葉や、物体の動きによって生まれる風に重ね合わせて表現する。

 中澤大輔は東京都と京都府を拠点に活動。人や場所、社会や習慣といった、日常の背後に潜む小さな物語を収集・再構成し、演劇・文化人類学・建築などの手法を用いて、オルタナティブなものごとの見方を発見するための体験型作品を展開している。本展では、TOKAS本郷の建物がかつて東京市本郷職業紹介所だったことに着想を得て、現代版の《本郷職業紹介所》を期間限定でオープンする。参加者は、様々な職業・立場の人たちに聞いた「働く意味」を鑑賞したのち、紹介所の「職員」と面談し、自身の仕事についての振り返りを行う。人生の多くの時間を費やす仕事といかに向き合うべきか、過去と現在を横断しながら、参加者自身が働く意味について考える場をつくる(職業紹介所の面談は予約制、予約受付中)。

 ユアサエボシは千葉県出身。大正生まれの架空の画家である「ユアサヱボシ」(1924~1987)に擬態し、創作に取り組んでいる。当時の時代背景だけでなく、福沢一郎や山下菊二など、実在した人物を架空の略歴に登場させ、これまで語られてきた歴史に巧妙なフィクションを織り交ぜながら制作している。本展では、ユアサヱボシが60~70年代に描いたとされる作品を発表。シュルレアリスムやルポルタージュ絵画、アメリカ文化などに影響を受けた作風により、実際にあり得たかもしれない歴史を提示するとともに、現代を多様な視座でとらえようと試みる。

 過去の出来事を起点にしながら想像力を介入させることで、共有される時空間の拡張を試みているアーティスト3名を迎えた本企画。昭和から令和へ、時代の流れとともに多様な人々が交流してきたTOKAS本郷の建物を舞台に、いまここに存在しない時間に接近することで、眼前の光景を再考する契機となることを目指す。