EXHIBITIONS

小企画展

ブロンズ彫刻の世界

2021.12.21 - 2022.03.21
 鹿児島市立美術館が小企画展「ブロンズ彫刻の世界」を開催。本展では、西洋近代彫刻の大家であるロダンやブールデルのほか、後に続いて空間との関係を探究したアーキペンコ、ムーアら、そして鹿児島ゆかりの安藤照、中村晋也らの作品を一堂に紹介する。

 彫刻には、石や木などの硬い素材をノミで彫り刻んでつくるカーヴィング(彫造)と、粘土や蝋などの柔らかく可塑的な素材を手やヘラで成形するモデリング(塑造)の技法があり、ふたつを合わせて彫塑と表現されることもある。ブロンズ彫刻は作家が粘土で制作した原型からとった型に金属を流し込んでつくられるため塑造にあたり、粘土を付ける・削る作業を繰り返しながら生み出されたかたちのなかに、作家の試行錯誤や手のぬくもりを感じることができるだろう。

 ブロンズ彫刻の原料である青銅は、主成分である銅に錫(すず)を混ぜることで硬度を強くした合金だ。その歴史は古く、紀元前3000年頃のメソポタミアのシュメール文明までさかのぼることができ、研磨や圧延などの加工が可能であったため斧・剣・銅鐸などがつくられた。日本には紀元前400年頃に大陸から鉄とともにもたらされ、現在も10円玉硬貨など身近な製品に使用されている。

 ブロンズは錫の含有量によって赤銅色から黄金色、白銀色まで色の変化が見られ、さらに腐食によって美しい青銅色になる。ブロンズ彫刻は基本的に彩色されることはなく金属の色がそのまま生かされるが、これは、あらゆる角度から鑑賞される彫刻にとって、光もまた作品の大切な構成要素となるからだ。モノトーンの肌は、光によってもたらされるボリュームやモデリングを最大限に引き立てている。

 本展では、ロダン、ムーア、クロチェッティ、マリーニ、安藤照、中村晋也などによる、ブロンズ彫刻の多様な表現を紹介。常設展示の屋外作品とともにブロンズ彫刻の世界を楽しみたい。