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EXHIBITIONS

梅津庸一+浜名一憲「6つの壺とボトルメールが浮かぶ部屋」

艸居アネックス
2021.12.04 - 2022.02.19

メインビジュアル

展示風景より

展示風景より

展示風景より

展示風景より

展示風景より

展示風景より

展示風景より

展示風景より

 浜名⼀憲と梅津庸⼀による展覧会「6つの壺とボトルメールが浮かぶ部屋」が艸居アネックスで開催されている。

 作品に共通点はないものの、姿勢や態度に重なる点のある浜名と梅津。2人は、既存のアートの制度や慣習を自明のものとせず、DIYの精神で環境や共同体も⾃前でつくろうとしている。今回、浜名に作品を託された梅津は、浜名作品と⾃作とが外的な「⽂脈」ではなく、作品同⼠が対話をできるシチュエーションを準備した。梅津によれば、本展は「インスタレーション」でもなければ「キュレーション」でもないと言う。

 昨今、現代美術は⼯芸、とりわけ陶芸と接近し互いの境界が曖昧となり、そんな状況を「多様性」「ジャンルの越境」と好意的にとらえる展覧会が多い。しかしアートマーケットにおいて表⾯的に消費されていく面もあるとし、本展はこの状況を踏まえつつ、「伝統と⾰新」のようなセルフオリエンタリズムや本質主義を再発⾒するようなキャッチフレーズ、また現代美術と⼯芸というフレームを掲げず、広い意味での「ものづくり」、そして「信頼関係」を起点に展覧会を⽴ち上げる。

 浜名はアートマーケットや観客に媚びることなく、⾃然と⽣活を⼀体化させた半⾃給⾃⾜の⽣活と、ものづくりとが分かち難く結びついたサイクルを確⽴している。⼀過性のものではなく時代を超えて在り続ける「もの」を追求している浜名だが、近年は江⼾時代に建てられた古⺠家の「改装された部分を取り去り当時の姿に戻す」という逆改装も試みている。

 また浜名は、地元で使われなくなった古い家を買い取っては制作の過程ごとに使い分けられるスペースをつくり進め、最終的には作家を呼んで作品制作できる場所にしたいと言う。その時々で、つねに⾃⾝のやりたいことに向かってきた浜名だが、⾃分なりの⽅法で地元の地域社会への還元を考えており、それは広義の意味での「共同体」をとらえ直す新しい挑戦だと⾔えるだろう。

 他方、梅津はラファエル・コランの《フロレアル》や⿊⽥清輝の《智・感・情》など、⽇本の近代洋画の黎明期の作品を⾃らに憑依させる⾃画像でキャリアをスタートさせた。そこには北澤憲昭『眼の神殿―「美術」受容史ノート』(1989)や椹⽊野⾐『⽇本・現代・美術』(1998)に通じる、「グローバルアートに対して⽇本固有の現代美術は成⽴し得るのか?」という問題が織り込まれていた。しかし梅津はこのドメスティックな問題に取り組みながらも、その前提を⾃ら覆すような活動も同時に⾏っている。

 ⼈の無意識や夢を主題にしたピュアなドローイング、⾃らの裸体をさらけ出すパフォーマンスを記録した映像作品、最近始めた陶芸、ノンプロフィットのギャラリー「パープルームギャラリー」や私塾「パープルーム予備校」の運営、批評活動、展覧会のキュレーションなど、ひとりの作家の仕事とは思えないほど広範囲で多岐にわたる活動を展開している。

 出⾃もこれまでの歩みも異なる2⼈が、互いの活動や作品に興味を持ち純粋に惹かれあって開催される本展。かつてゴッホがゴーギャンを「⻩⾊い家」に招いたように、梅津が2⼈の作品のために手がけた神秘的な空間に誘う。