EXHIBITIONS
森本啓太「After Dark」
KOTARO NUKAGA(天王洲)で、森本啓太の日本初個展「After Dark」が開催されている。カナダを拠点としてきたアーティストにとって15年ぶりの帰国。本展では、新作のペインティング21点を展示。
森本は1990年大阪府生まれ。2006年、16歳の時にカナダへ移住。21年に日本へ帰国するまでの16 年間をトロントで過ごす。現在は東京を拠点に活動。カナダではオンタリオ州ベルビルのセンテニアル中等学校で高校を卒業後、12年にオンタリオ芸術大学(現在のOCAD大学)で美術学士号を取得した。
森本は、トロントの街並みとその住民の描いた絵画で知られており、クラシカルな技法を現代に持ち込み日常的な風景を非日常的なものへと変換し、見えている現実世界の構造的な脆弱さと人が生きていく上で必要とする本来の豊かさの獲得についての問題を浮かび上がらせる。その作品は、トロントのMuseum of Contemporary Art Toronto CanadaやNicholas Metivier Galleryなど、カナダを中心にイギリスやアメリカなどでも展示されている。
カナダで初めて絵画制作を学んだ森本、なかでも古典絵画の技法や構図に関心を持ってきた。バロック期の絵画ように完璧にコントロールされた光の表現と、現代社会における日常的な風景をモチーフとして折衷的に組み合わせることにより、独自のリアリズムを確立。特別ではないありきたりな風景のなかに美しさや神秘性を生み出し、誰でもない誰かが主人公になる独自のナラティブを生成するその手法は、エドワード・ホッパーやピーター・ドイグなどに代表される「マジックリアリズム」の系譜に位置づけられつつも、現代社会を見つめる冷静なまなざしによって鑑賞者に新鮮な視座をもたらす。
本展で展示されるシリーズにおいて森本は、レンブラントをはじめ美術史のなかでも人々を魅了し、神秘的、宗教的に扱われてきた「光」をモチーフに扱う。しかし光を自然的や神聖な現象だけでなく、現代の消費社会のなかで人々を惹きつける自動販売機やファーストフード店、駐車場の電飾サインなどにまで拡張し、21世紀の日常的な経験を描き出している。
「現代社会において、多くの人が生き苦しさを抱えている」と話す森本。とくにそれは相互監視の社会システムがつくられ続けている現代で、私たち自身が無意識のうちに自分自身の外側に規定される価値観に対し、自身の意識を向け過ぎていることで生まれているのではないかと作家は考えている。森本は絵画を描くことで、そうした現代社会の抱えるある種の「生きづらさ」から軽やかに逸脱をしてみせている。
森本は1990年大阪府生まれ。2006年、16歳の時にカナダへ移住。21年に日本へ帰国するまでの16 年間をトロントで過ごす。現在は東京を拠点に活動。カナダではオンタリオ州ベルビルのセンテニアル中等学校で高校を卒業後、12年にオンタリオ芸術大学(現在のOCAD大学)で美術学士号を取得した。
森本は、トロントの街並みとその住民の描いた絵画で知られており、クラシカルな技法を現代に持ち込み日常的な風景を非日常的なものへと変換し、見えている現実世界の構造的な脆弱さと人が生きていく上で必要とする本来の豊かさの獲得についての問題を浮かび上がらせる。その作品は、トロントのMuseum of Contemporary Art Toronto CanadaやNicholas Metivier Galleryなど、カナダを中心にイギリスやアメリカなどでも展示されている。
カナダで初めて絵画制作を学んだ森本、なかでも古典絵画の技法や構図に関心を持ってきた。バロック期の絵画ように完璧にコントロールされた光の表現と、現代社会における日常的な風景をモチーフとして折衷的に組み合わせることにより、独自のリアリズムを確立。特別ではないありきたりな風景のなかに美しさや神秘性を生み出し、誰でもない誰かが主人公になる独自のナラティブを生成するその手法は、エドワード・ホッパーやピーター・ドイグなどに代表される「マジックリアリズム」の系譜に位置づけられつつも、現代社会を見つめる冷静なまなざしによって鑑賞者に新鮮な視座をもたらす。
本展で展示されるシリーズにおいて森本は、レンブラントをはじめ美術史のなかでも人々を魅了し、神秘的、宗教的に扱われてきた「光」をモチーフに扱う。しかし光を自然的や神聖な現象だけでなく、現代の消費社会のなかで人々を惹きつける自動販売機やファーストフード店、駐車場の電飾サインなどにまで拡張し、21世紀の日常的な経験を描き出している。
「現代社会において、多くの人が生き苦しさを抱えている」と話す森本。とくにそれは相互監視の社会システムがつくられ続けている現代で、私たち自身が無意識のうちに自分自身の外側に規定される価値観に対し、自身の意識を向け過ぎていることで生まれているのではないかと作家は考えている。森本は絵画を描くことで、そうした現代社会の抱えるある種の「生きづらさ」から軽やかに逸脱をしてみせている。