EXHIBITIONS

坂上チユキ展「辺境にて」

2021.11.04 - 11.28

坂上チユキ 辺境にて 2017 ©︎ Chiyuki Sakagami Courtesy of MEM

坂上チユキ 我等を試みに 引き賜わざれ Ⅷ 生きよ!! どの様な苦しみに襲われんとも・・・・・ 2016 © Chiyuki Sakagami Courtesy of MEM

坂上チユキ 水葬 2009 © Chiyuki Sakagami Courtesy of MEM

 MEMは、4年前に急逝した作家・坂上チユキ(1961〜2017)の仕事を振り返る展覧会を開催している。

 坂上の代表作は、極細の筆で青を基調にした、微細な画面を構成する水彩や顔彩のドローイング。自身が書いた自叙伝には「5億9千万年前プレカンブリア紀の海に生を受けた」とあり、その後大気が形成された、シルル紀時代の鮮烈な空と海の青の記憶を描いていると言う。

 古代の生物や、神話に登場する動物や幻獣を描いたり、古今東西の文学や音楽などを引用したり、生涯愛した鳥類(始祖鳥や極楽鳥、また常に傍らに飼っていたインコたち)を主題にした作品も多く残されている。また坂上はクリスチャンでもあり、聖書からの一節を作品の中核に据えることもあった。

 本展で展示される「我等を試みに 引き賜わざれ」の一連のシリーズは、主祷文の一説から引用されたもの。「ひとつひとつ筆をおき描く行為が、祈る行為と重なり合っている」と、坂上はかつて語っていた。

 本展では、いままで発表した「鳥の写本」、「陽性転移」などのシリーズから選抜した作品に加え、遺作になった油彩《辺境にて》を展示している。