EXHIBITIONS

大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!

2021.11.16 - 2022.01.16

Milano Torino Superway 1974 うらわ美術館、埼玉県立近代美術館蔵(うらわ美術館、埼玉県立近代美術館展示)

約束の時間 1970 豊田市美術館蔵(埼玉県立近代美術館展示)

立石紘一のような 1964 高松市美術館蔵(埼玉県立近代美術館展示)

タイガー・ゲルニカ 1970 Courtesy of ANOMALY(埼玉県立近代美術館展示)

アンデスの汽車 1997-98 東京ステーションギャラリー蔵(埼玉県立近代美術館展示)

 埼玉県立近代美術館で「大・タイガー立石展 世界を描きつくせ!」が開催される。本展は、うらわ美術館との2館同時開催となる。

 タイガー立石(本名・立石紘一)は絵画、マンガ、イラストレーション、絵本と、様々なジャンルで活躍したアーティスト。縦横無尽にジャンルをまたぐそのスタイルは、世代を越えて今日の若いアーティストにも刺激を与え続けている。

 立石は太平洋戦争の始まった1941年に、筑豊の炭鉱の街・伊田町(現・福岡県田川市)で生まれた。戦後はマンガや映画を愛する少年として育ち、61年に大学進学のために上京。63年に前衛芸術の牙城であった「読売アンデパンダン展」で、玩具や流木などを大画面に貼り付けた作品を発表し頭角を現すと、時代や社会のアイコンを大胆に引用した絵画を制作し、和製ポップ・アートの先駆けとして高く評価される。また65年からはマンガも描きはじめ、「タイガー立石」の筆名を用いて連載も手がけた。

 日本での活躍が期待されていたさなか、立石は69年に突如イタリアに移住。13年間をミラノを中心に活動し、イタリアではマンガを応用したコマ割りの絵画を精力的に描いた。そのSF的な世界や独特の画風はイタリアの美術界だけでなく、建築・デザインの世界からも注目されると、当時、急進的な建築・デザイン運動を先導していたエットレ・ソットサスやアレッサンドロ・メンディーニらと協働し、卓越したイラストレーションの仕事を残した。

 82年に帰国した立石は、その後、自作のマンガを編纂した『虎の巻』を刊行するいっぽう、視覚的な遊びを盛り込んだ絵本の制作にも着手。また絵画では、大衆的なイメージや、明治・大正・昭和といった歴史を振り返るモチーフを取り上げ、パロディに満ちた大作も描いたほか、軸物や巻物など伝統的な絵画形式にも挑戦し、多彩な才能を発揮した。

 あらゆる世界を奇想天外な時空間のなかに引用・再編し、多次元的なものへと拡張した立石。その生誕80年を迎える記念の年に開催される本展では、「タイガー立石」という特異なアーティストを大規模に振り返る。

 埼玉県立近代美術館では、作家の画業の全体像を回顧するとともに、これまであまり紹介されることのなかったイタリア時代についても資料を交えて紹介。いっぽう、「本をめぐるアート」をコレクションのテーマとするうらわ美術館では、立石のマンガと絵本にフォーカスする。会期は2館ともに11月16日~2022年1月16日まで。