EXHIBITIONS

島 州⼀ 追悼展「Tracing-Shirt」

2021.06.21 - 07.24, 2021.07.06 - 07.24

島州⼀ Tracing–Shirt 198 2015

島州⼀ Tracing–Shirt 211 2016

 RED AND BLUE GALLERYでは、美術家・島州⼀(しま・くにいち、1935〜2018)の追悼展「Tracing - Shirt」を開催する。

 島は東京都出身、多摩美術⼤学絵画科卒業。「集団・版」の結成に参加し、70年代からサンパウロ・ビエンナーレ、シドニー・ビエンナーレなどの国際展に出展。1994年より浅間⼭連峰の裾野にある⻑野県東部町(現・東御市)にアトリエを構え、移住して以後、油彩、⽔彩作品を中⼼に発表した。

 2005年、「武蔵野美術⼤学研究紀要2004-35」に⾔語と絵画の構造を同⼀化させた⾃らの絵画論『⾔語の誕⽣』を寄稿。07年に「Tracing-Shirt」シリーズの制作を始め、11年に市⽴⼩諸⾼原美術館で個展「原⼨の美学」、16年に埼⽟県⽴近代美術館で「島州一 世界の変換と再構築」展が開催された。18年、⾃らの闘病⽣活を記録したフェイスダイアリー「とんだ災難カフカの⽇々」を死の前⽇まで描いた。享年82歳。19年に「追悼 島州⼀版画展」が須坂版画美術館で開催された。

 作家が逝去してから3年。島は、版の概念を問い直す70年代の前衛的な作品から⼀貫して美術の概念を揺さぶり拡張してきた。そして東京から⻑野へアトリエを移した後、⽬の前に拡がる浅間⼭をテーマに⾵景画を模索し続け、生まれたのがライフワークとも呼べる「Tracing - Shirt」シリーズだった。

 その⽔彩画は⽇々⾒上げている浅間⼭の化⾝として、普段⾝につけている作家のシャツを克明にトレースすることから始まった。浅間⼭のアイコンとしてのシャツ、作家のアイコンとしてのシャツが同時に存在していること。島は、浅間⼭という絶対的な⾃然空間と個⼈として⽣活している⽇々の時間や⾝体性、これら相対するものをひとつの画⾯に封じ込めるという⼿法を発⾒した。

 そこから季節や時間による⼭の景⾊の移ろいをワードローブのなかからその⽇の気分で選んだシャツに重ね合わせ、投影することによって200点を超える多彩なシリーズ作品を生み出した。

 RED AND BLUE GALLERYのこけら落としを飾った島の「Tracing - Shirt」シリーズ。たんにシャツを描いた⽔彩画ではなく、1枚1枚を作家⾃らの⼿によってトレース、敷き写された、⾮凡な作家の出⾃である前衛的なモノタイプの版画作品と⾔えるだろう。

 島の⾜跡をたどる個展は、コバヤシ画廊での「島州⼀追悼展 ⾔語の誕⽣」(6⽉21⽇〜7⽉3⽇)と同時期開催される。