EXHIBITIONS

瀬戸正人 記憶の地図

瀬戸正人 「バンコク、ハノイ」より《バンコク中央駅の裏通り、早朝》 1982-1987 東京都写真美術館蔵

 タイや日本をはじめとするアジア各地で撮影してきた写真家・瀬戸正人の展覧会「瀬戸正人 記憶の地図」が東京都写真美術館で開催されている。

 瀬戸はタイ国ウドーンタニ市出身。1953年、日本人の父とベトナム人の母のもとで生まれる。61年に父の故郷である福島県に移住。東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)の在学中に、森山大道の紹介で岡田正洋写真事務所に勤務し、同時に深瀬昌久の助手を務める。

 81年に独立し、87年には自らの発表の場としてギャラリー「Place M」を開設。写真集『《バンコク、ハノイ》1982-1987』での日本写真協会新人賞受賞(1989)をはじめ、 『Silent Mode』『Living Room, Tokyo 1989-1994』で第21回木村伊兵衛写真賞(1996)を受賞するなど、現代日本を代表する写真家のひとりとして高い評価を得ている。

 瀬戸は『《バンコク、ハノイ》1982-1987』でデビューして以降、タイと日本を往還しながら、半世紀以上にわたってアジアの人々の暮らしや表情、風土や自然、社会にレンズを向けてきた。「写真は『記録』であると同時に『記憶』でもある」と語っている。

 本展は、デビュー作から、特異な視点で都会に生きる人々をとらえた『Silent Mode』シリーズの最新作まで、各時代の代表作によって、瀬戸が見たアジアを紹介。展示される写真群は、瀬戸自身の記憶とともに、何層にも折りたたまれた「記憶の地図」となって、見る者のまえに鮮やかに浮かび上がらせることだろう。