EXHIBITIONS

日本ガラス工芸の先達たち

―藤七、鑛三、そして潤四郎

2020.10.10 - 11.23

佐藤潤四郎 車 1971 福島県立美術館蔵

岩田藤七 花器(ナイル河畔) 1970 北海道立近代美術館蔵

各務鑛三 飾皿「祈り」 岐阜県美術館蔵

 ガラス製品の需要が増え、ガラス製造技術も大いに発展した明治時代。同じ頃、陶芸などの工芸分野がいちはやく「美術」として認められていったにもかかわらず、ガラス工芸は産業製品としての位置づけから脱することができないままでいた。そんななか、ガラスの芸術性に取り組んだ3人の先達たちがいた。

 ガラス作品で初めて帝展で特選に輝いた岩田藤七(1893〜1980)は、その地位向上に努め、色鮮やかで個性的な作風で日本のガラス工芸界を牽引。各務鑛三(かがみ・こうぞう、1896〜1985)は、「透明なクリスタルガラスこそがガラス工芸の王道」と信じ、ガラスのきらめきを生かした作品を生み出した。

 そして藤七、各務に次いで登場した郡山市出身のガラス工芸家・佐藤潤四郎(1907〜1988)は、先のふたりが芸術の域に高めたガラス工芸の本質にふれながら、芸術作品と日常の器の制作のあいだで悩み、やがて「用の美」を追求。酒や水の容量、持ちやすい寸法や形状などの「制限」のなかで、鑑賞の対象としても優れたデザイン性を有する佐藤のガラス作品は、クリスタルを基調としながらも、「温かいガラス」「柔らかいガラス」とも呼ばれた。

 本展では、3人が手がけたガラス工芸の名品を展示。岩田、各務という先達ふたりが切り開いた道を、佐藤はいかに展開していったかを検証するとともに、それぞれの作家が近代ガラス工芸史に残した功績を紹介する。