EXHIBITIONS

久保田沙耶「人はなんていうの」

2020.07.18 - 08.15

久保田沙耶 参考画像 撮影=徳吉雅人

久保田沙耶 参考画像 撮影=徳吉雅人

久保田沙耶 参考画像 撮影=徳吉雅人

 届け先のわからない手紙を預ける「漂流郵便局」の活動でも知られるアーティスト・久保田沙耶の個展が、HARMAS GALLERYで開催されている。

 久保田は1987年茨城県生まれ。幼少期を香港で過ごす。12年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修士課程を、17年に同大学大学院美術研究科美術専攻油画研究領域を修了。14年にテラダアートアワードでミヤケマイ賞を受賞した。代表的な展示に、個展「Material Witness」(大和日英基金、ロンドン、2016)や、アートプロジェクト「漂流郵便局」(瀬戸内国際芸術祭2016)など。主著に『漂流郵便局』(小学館、2014)、『漂流郵便局 お母さんへ』(小学館、2020)がある。

 13年の瀬戸内国際芸術祭での「漂流郵便局」、15年の「鹿を歯医者に連れて行く」において、自身の出会った場や出来事、土地の歴史などを咀嚼し、ウィットに富んだ作品を制作してきた久保田。近年制作を続けるなかで顕在化してきた葛藤と自問、そして鳥取での4年にわたる滞在制作中での民藝活動へのリサーチから、日々の暮らしと制作を地続きに結びつけ、そして自身の作品を言い値で売る「コレデ堂」の活動のなかでの、作品の価値の多様な現れ方も経験した。

 本展は、人と人のつながりがあるなかでの嘘のない制作を経たうえでの、作家いわく「無理をしていない等身大でむき出しな」作品で構成。これまでの、久保田作品に見られたコンセプトとビジュアルが見事に合致した、端正さとは趣が異なる展示となるという。

 絵を描き、棚に並べ、それを見にきた人たちの心のなかに絵の居所ができ、対価を得る。いま現在の自身を取り巻く物事への心の機微を丁寧に見つめた作家の、生きることとつくることの正直な発露がギャラリー空間に現れる。